著者
渡辺 智 大沼 みお 田中 寛
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0706, 2008 (Released:2008-12-18)

ヘム合成は生物にとって様々な生理機能に関与する代謝機能であり、特に光合成生物にとっては光合成電子伝達鎖や集光色素の構成経路としての重要な役割を持つ。ヘムはテトラピロール生合成経路を経て最終的にフェロキラターゼ (FeCh) によって合成される。高等植物ではテトラピロール生合成は主に葉緑体で行われることが示唆されてきたが、FeChの酵素活性はミトコンドリアからも検出されることから、その細胞内局在は議論されてきた。 単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeは核、葉緑体、ミトコンドリアを一つずつ有する極めて単純な細胞をもち、真核細胞成立時の特徴を多く残した生物であることが示唆されている。我々はC. merolae におけるFeChの細胞内局在を明らかにすることを目的として、当研究室において開発されたC. merolaeへの一過的な遺伝子導入技術を用いてFeChの局在解析を行った。HAタグと融合させたFeChをC. merolae細胞に導入し、抗HA抗体で免疫染色後、蛍光観察した結果、ミトコンドリアからの蛍光が確認された。またFeChのアミノ酸配列に基づいた系統解析では、シゾンのFeChは緑色植物の葉緑体局在型FeChと異なるグループに分類された。これらの結果から光合成生物におけるFeChの細胞内局在と、その進化的意義について考察する。