著者
田中 寛之
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2023-02-13 (Released:2023-02-15)
参考文献数
32

認知症を呈す多くの疾患は進行性である。そのため,支援者は疾患の進行経過を理解し,対象者の今のステージを把握する必要がある。現在の医学では,アルツハイマー病をはじめとした認知症を呈する変性疾患の根治的治療は困難なため,いずれは中等度・重度の段階に至る。中等度・重度の段階は,軽度や軽度認知障害の段階と比較して,病態は複雑化し評価・介入が難しくなることもあるため,これまでは支援者の経験値に委ねられたものとなり,根拠に基づいた支援が行われていなかったように思われる。認知症者に適切なリハビリテーション・ケアを行うには病状を重症度ごとに,目的に合わせた評価法を用いて,その結果を解釈し,個別性のある介入戦略を立てる必要がある。しかし,中等度・重度の段階で使用できる各種評価法や介入のために活用できる概念モデルについては,これまであまり知られておらず,特に国内では浸透していなかった。本稿では,中等度・重度認知症者で用いることができる認知機能,日常生活活動(Activities of Daily Living; ADL),行動心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia; BPSD)の各種検査・評価法や介入の際に参考にできる概念モデルについて概説する。今後,この段階における研究がさらに進むことが望まれる。
著者
田中 寛 保田 淑郎 柴尾 学
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-9, 2015-05-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
28

関西国際空港において1994~97年に一期島(生息可能面積 143 ha),2007年に二期島(同 139 ha)でトノサマバッタが大発生し,群生相に特有の黒色とオレンジ色の2色の幼虫が認められた。調査は主にライントランゼクトおよびコドラート法により,管理はMEP 乳剤の散布により行った。1994~97年の推定生息個体数の最大値は1,338万個体で,天敵糸状菌Entomophthora grylli の発生とともに1997年に大発生が終息した。2007年の推定生息個体数の最大値は3,884万個体で,同じくE. grylli の発生とともに2007年7月に大発生が終息した。大発生の原因は,埋め立てにより出現した天敵不在の生物環境下に移入した成虫が数世代激しく増殖したことにあると考えられる。トノサマバッタの群生相集団は一期島,二期島とも島の北西部に偏在する傾向が認められ,この原因は6~9月の南ないし南西の風によるものと考えられる。関西国際空港においてトノサマバッタの生活史は主として年2化であり,卵だけでなく成虫,幼虫についても越冬が確認された。2007年の大発生時には効率的な調査および管理のための基本戦略を設定した。すなわち,①迅速な調査,②結果の地図化による全体把握,③高密度地点から低密度地点へと順に行う防除,④次回調査による防除効果の的確な評価(=①),⑤「①~③」の繰り返し,⑥天敵保護を目的とした低密度地点における薬剤散布の抑制,の6点とした。この戦略にしたがってMEP 乳剤により防除したところ,2007年6月9~11日に3,884万であった推定生息個体数は6月19日に14万に急減した。以上の結果,一期島,二期島におけるトノサマバッタの大発生は適切に管理され,航空機の運航に支障はなかった。
著者
古賀 政利 井上 学 園田 和隆 田中 寛大 塩澤 真之 岡田 敬史 池之内 初 福田 哲也 佐藤 徹 猪原 匡史 板橋 亮 工藤 與亮 山上 宏 豊田 一則
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10776, (Released:2020-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
3 1

要旨:脳梗塞の診断にはCT もしくはMRI による画像評価が必須である.再開通療法の可能性があれば速やかに最低限必要な画像評価で再灌流療法の適応を決定することが重要である.2018 年に改訂された米国のガイドラインでは,来院から20 分以内に画像診断を行うことが推奨されたが,わが国のガイドラインには画像診断までの時間の推奨はない.わが国では普及率が高いMRI で急性期脳梗塞を評価している施設が多い.機械的血栓回収療法の適応判定には脳実質の評価に引き続き速やかな頭頸部血管評価が必要である.米国では発症6 時間超の脳梗塞に対してCT もしくはMRI を使用した脳虚血コア体積や灌流異常の評価による機械的血栓回収療法の適応を推奨しているが,わが国では灌流画像評価や迅速解析に対応した自動画像解析ソフトウェアが普及していない.急性期脳梗塞に対する適切な再灌流療法を行うための,わが国の医療環境にあわせた画像診断指針が必要であろう.
著者
田中 寛之 永田 優馬 石丸 大貴 日垣 一男 西川 隆
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.405-415, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
17

本研究の目的は,筆者らが開発したライフヒストリーカルテ(以下,LC)の導入による病院・施設職員(以下,スタッフ)の患者・利用者に関する理解度への影響を明らかにすることと,LCの利点と活用法を具体的に示すことである.患者・利用者に関する医療・介護者の理解尺度をLC導入前と導入1年後に実施し,さらに,スタッフにLCの利点と有用な活用法を自由記述してもらった.LCの導入による医療・介護者の患者理解度の改善はみられなかったが,「食思不振改善のヒントになった」などの自由記述から,多くの利点が明らかになった.
著者
栗林 志行 保坂 浩子 中村 文彦 中山 哲雄 中田 昂 佐藤 圭吾 關谷 真志 橋本 悠 田中 寛人 下山 康之 草野 元康 浦岡 俊夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.308-315, 2020-03-25

要旨●食道アカラシアは,EGDで拾い上げが可能であることが多いものの,治療選択に関わるサブタイプの診断は困難である.また,その他の食道運動障害では内視鏡検査時に異常所見を認めることはまれである.食道X線造影検査は食道運動障害の拾い上げに有用であるが,やはり食道アカラシアのサブタイプやその他の疾患の診断には,食道内圧検査,特にHRM(high-resolution manometry)が欠かせない.食道アカラシアをはじめとする食道運動障害の診断では,EGDや食道X線造影検査,HRMなどの検査所見を総合的に評価することが必須と考える.
著者
田中 寛一
出版者
関西大学フランス語フランス文学会
雑誌
仏語仏文学 (ISSN:02880067)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.129-147, 2003-02-28

伊地智均教授退職記念号
著者
田中 寛
出版者
大東文化大学別科日本語研修課程
雑誌
別科論集
巻号頁・発行日
no.4, pp.31-66, 2002-03

目的節「ために」、「ように」はこれまで、意志動詞の介在を主要な論点として、その使い分け、特徴が論じられてきたが、そのほかにも「意味の整合性」においても特徴が見出される。本稿では従来あまり議論されなかった「ためには」「ためにも」などの用法も視野におきながら、目的節と主節の意味的な交渉について考察するものである。その結果、「ために」と「ように」の重なる用法や、「ためには」・「ためにも」のように、「は」、「も」を付加することによって、条件的な意味が含意され、"中和化"が進んで「ように」節との重なりが見られることを確認した。また、「ように」節は「ようにする」、「ようになる」と連鎖関係にあり、結果を見越した目的を設定してそれに近づく努力をあらわすのに対し、「ために」には初期の目的そのものを設定する意図が内包されていることを検証した。また、複合形「-ようにするために」などの用法についてもふれた。
著者
田中 寛子
出版者
大阪市立大学
巻号頁・発行日
2015

終了ページ : 259
著者
田中 寛二 Tanaka Kanji
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.10, pp.71-95, 2002-09

本研究では,大学生の大学構内と公道における交通行動を規定する要因を明らかにするために,大学生281人を対象とした信号無視,駐車違反,スピード違反,飲酒運転,及び危険運転の目撃,許容,行動に関する調査を行った。その結果から以下のことが明らかにされた。①各種の違反行為に対する許容と行動の各得点は低く,許容的でも,頻繁に行動するものでもないことが示された。②大学構内では各種の違反に対する許容性が公道よりも高いが,駐車違反と飲酒運転では公道にいて,信号無視とスピード違反については大学構内の方が高いことが示めされ,違反の内容によって行われやすい状況に差があることが示唆された。③行動と関連する要因として,大学構内では,概して目撃と許容が関連しているが,公道では必ずしもそのような一貫した傾向は認められなかった。すなわち,大学構内では目撃によって各種の違反行為が比較的直接的に誘発される可能性が高いことが示唆された。
著者
大城 トモ子 国吉 和子 田中 寛二
出版者
沖縄大学
雑誌
地域研究 (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.117-125, 2005-06-30

沖縄本島内の家族による老人介護の様子を実態調査した。介護負担は、要介護者の状態のみならず、介護内容によっても異なっていた。また、介護者は敬老の精神を持っており、ストレスに認知的対応をしていた。そして、介護負担過剰の時の虐待の危険性も否めず、介護者は支援を求めていた。