著者
河井 康孝 須甲 憲明 福元 伸一 竹内 裕 大泉 聡史 原田 真雄
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.227-233, 2013 (Released:2013-09-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

背景.原発性肺癌の自然退縮は非常に稀な現象である.症例.55歳,男性.右頚部腫瘤を自覚し,前医にて頚部リンパ節生検を施行されたが壊死が強く確定診断はできなかった.右肺尖腫瘤もあり,当科にて経気管支肺生検を行ったところ,組織像は瘢痕像のみでやはり確定診断は得られなかった.その後,肺腫瘤および頚部リンパ節はともに無治療で縮小を続けたが,8か月後に別の右頚部リンパ節腫大が新たに出現し生検にて分化度の低い癌細胞を認めた.さらに右肺上葉切除術を施行した結果,肺大細胞癌と確定診断された.肺原発巣および頚部リンパ節ともにHLA class Iの強い発現とCD8リンパ球浸潤を認めた.また経過中,病状悪化時には白血球数および血清G-CSFも高値であり,腫瘍細胞も免疫組織学的にG-CSF陽性であったため,G-CSF産生腫瘍と考えた.結論.悪性腫瘍の自然退縮はいまだその機序は解明されていないが,HLA class I発現やCD8リンパ球浸潤など腫瘍免疫が深く関与していると考えられる.本症例はG-CSF産生肺大細胞癌が自然退縮を示したと推察される興味深い症例と考え報告した.