著者
棚瀬 幸司 大津 佐和子 佐藤 茂 小野崎 隆
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.179-187, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
30
被引用文献数
4 16

花持ちに優れるカーネーション‘ミラクルシンフォニー’(MS),系統 006-13,系統 62-2,対照品種‘ホワイトシム’(WS)の花におけるエチレン生成,エチレン生合成遺伝子,老化関連遺伝子の解析を行った.WS では収穫 6 日後に典型的な老化の兆候である花弁のインローリング,生重の急激な減少,急激なエチレン生成量の増加が観測された.MS,006-13,62-2 では典型的な老化の兆候は観察されなかったが,花持ち日数と収穫 15 日後のエチレン生成量に違いが見られた.006-13,62-2 では収穫 15 日後に低レベルのエチレン生合成遺伝子(DcACS1,DcACO1)の発現が確認され,わずかにエチレンを生成していた.一方,MS ではエチレン生成量,DcACS1,DcACO1 の発現のいずれも極めて低レベルであった.006-13,62-2 では収穫 15 日後に老化関連遺伝子(DcCP1,DcbGal,DcGST1,DcLip)の発現上昇が観察された.これらの遺伝子は外生エチレン処理により発現量が上昇することから,わずかなエチレン生成が老化関連遺伝子の発現を誘導し,花弁の老化を引き起こすと考えられる.一方,外生エチレン処理により発現が低下する DcCPIn は老化とともに発現量が低下するが,MS,006-13,62-2 における収穫 15 日後の DcCPIn の発現量には大きな差が見られなかった.これらの結果から,花持ちに優れるカーネーションでは,エチレン生成量,エチレン生合成遺伝子および老化関連遺伝子の発現量が低下し花持ちが延長している可能性が示唆された.