- 著者
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大津 正英
- 出版者
- 日本応用動物昆虫学会
- 雑誌
- 日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.31-35, 1971-03-25
- 被引用文献数
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トウホクノウサギは,一般野生哺乳類のごとく,比較的明瞭な繁殖周期を持っており,卵巣重量は,11月から1月にかけて最小となり,2月下旬から3月には大きくなり始める。繁殖期は春から夏にわたるが,この頃の卵巣は大きく,肉眼的にも組織的にも活動的である。そして9月から10月には急速に退行する。<br>本種の繁殖期に対する長日照効果を明らかにするため,1968年12月11日から成獣,雌25頭雄10頭に対して長日照処理を行なった。これらの動物には,日の出から午前9時までは自然光線により,その後日の入までは自然光と螢光燈により,また日の入から午後9時までは螢光燈によって照射を行なった。<br>長日照処理動物の卵巣重量は,処理開始後50日経過した1月30日には急速に増大していた。自然状態における動物の卵巣が,これと同じように発育するのは,2月下旬から3月にかけてである。長日照処理は3月6日に終了したが,4月12日において,処理動物の卵巣重量に退化はみられなかった。<br>対照動物では2月26日に最初の妊娠個体が認められ,また最初の出産は4月5日で産児数は3頭であった。処理動物の最初の妊娠個体は1月30日に認められ,最初の出産は2月22日で産児数は1頭であった。処理動物の繁殖は2月22日から4月10日まで続き,その後4月11日から6月29日まで中断したが,6月30日に再開し,8月22日まで繁殖を続けた。<br>長日照処理動物と対照動物の卵巣組織には,周年成熟しているか,それに近い濾胞が存在しているのがみられた。