- 著者
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大浜 剛
大松 勉
- 出版者
- 山口大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
本研究の目的は、停滞感のある抗がん剤開発の分野に対して、旧来の分子標的薬開発とは逆転の発想である「ホスファターゼを活性化する創薬」を提案するための基盤になることである。具体的には、最近申請者が発見した、重要ながん抑制因子であるホスファターゼPP2A、PP2A阻害タンパク質であるSET、および転写因子E2F1から構成されるシグナル伝達「SET/PP2A/E2F1軸」が、がんの悪性化を引き起こす分子機構と、イヌおよびヒトの腫瘍における役割の比較検証を行う。また、申請者が樹立した「発光反応によるタンパク質結合解析系」を用いて、PP2Aを活性化してSET/PP2A/E2F1軸を動かす刺激を同定し、抗がん効果を解析する。本年度は、ヒトおよびイヌの骨肉腫細胞株について、SET発現を抑制した細胞ET発現の低下が、がん細胞の表現型に与える影響について解析を行った。その結果、ヒトとイヌの骨肉腫細胞株では、SET発現抑制に対する反応性が大きく異なり、イヌ細胞ではSET発現抑制による抗がん効果が弱いことが明らかとなった。この点は、比較生物学的な観点から興味深く、より詳細な検討を行う予定である。ヒト骨肉腫細胞株に対するSET発現抑制の効果については、詳細な分子機構を解明するため、次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析を行った。今後は、得られたデータをもとに、着目したシグナル伝達機構について、より詳細な検討を行う予定である。また、「発光反応によるタンパク質結合解析系」を用いた検討について、PP2AとSETの結合(PPI)を制御するシグナル伝達機構を明らかにするため、各種阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニングを行った。これにより、PPIに影響を与える阻害剤が幾つか同定された。今後は、ヒット化合物についての詳細な検討を行うと同時に、新規化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを追加する予定である。