著者
大浦 由美 野口 俊邦 佐藤 晶子
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.1-8, 2002-07-01
被引用文献数
2

本研究では,国有林野における森林レク事業の国有林ならびに地域社会にとっての今日的意義および問題点を明らかにすることを目的として,長野県木曽谷地区を事例に,中でも典型的な利用形態である「スキー場型」国有林野利用を地元主導で進めてきた王滝村の取組みについて分析を行った。その結果,おんたけスキー場は1990年代初頭までは民宿等の発展や雇用創出など地域への経済的波及効果の面で多大な成果を上げてきた。しかし,現在ではスキー人口の頭打ちやスキー場乱立の影響で利用者は激減し,木曽谷地区でも大問題となっている。こうした状況については,1980年代後半からの国策的な民活型大規模リゾート開発の推進および自己収入確保の観点から積極的にこれに乗じてスキー場等の開発を進めた国有林の施策展開にも大きな責任がある。村は新たな展開として国有林内林道を活用したイベント等,より多面的な利用に期待している。こうした動向が,従来よりも国有林と地元との関係をむしろ強める方向に働いていることから,多面的な森林レク事業的国有林野利用は地域社会と国有林との現代的な関係の再構築という意味で今日的意義を持ち得ると言える。