著者
大海 由佳 舘 亜里沙
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-32, 2016-03-15

本研究は、初等音楽教育における新しい「表現教材」として,小学校第6 学年の鑑賞教材として取り上げられることが多い宮城道雄の《春の海》に着目し考察することを目的としている.初等音楽教育では「日本の伝統音楽」の代表的な教材として取り上げられている筝と尺八のための器楽曲《春の海》の歴史的背景と楽曲を分析し,これを踏まえて渡辺論文「《春の海》はなぜ日本的なのか」やルネ・シュメー Renée Chemet の《春の海》編曲作品を基底にした音楽学的視点から《春の海》が「音楽表現教材」となりうる根拠を挙げている.明治時代以降に入ってきた西洋音楽の作曲技法と,それ以前から存在していた邦楽器の響きを組み合わせる形で創作された《春の海》は,児童の表現技術に合った構成と編曲により小学校音楽教育の現場での新しい可能性を持つ楽曲であるといえる.