著者
花園 誠
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.217-221, 2016-03-15

ダンゴムシ・ワラジムシ類(Armadilloidea) は, 比較的温暖な気候を好み, 国内では本州以南に広く分布している. 本報告では, ダンゴムシ・ワラジムシ類がチョークに集まること, さらに環境教育における実践から, その事実は一部の小学生の印象に残ったことを示す.
著者
長嶺 宏作
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-8, 2016-10-31

本稿ではロビンソン物と呼ばれる児童文学に焦点をあてながら, 近代的な主体としての子どもが, どのように描かれてきたのかを明らかにしたい. ルソーが, 『エミール』の中で成人の理想像としてロビンソンを見たように, ロビンソンは子どもにとって目指される人間像の一つでもあった. ルソー以降, ロビンソン物は, 主人公を子どもに変えて, 子どもの物語として再生産され,どんな状況においても理性的な行動をしえる「自然人」, あるいは近代的な主体の物語となった.そこでバランタインの『珊瑚島』, スティーブンスの『宝島』, ヴェルヌの『十五少年漂流記』, ゴールディングの『蠅の王』の4 つの作品を取り上げ, 「自然」の子どもの変遷を明らかにする. 4つの作品の子ども像を考察したうえで, 自明視されなくなった現代の子ども像・人間像が, どのように再び語られうるのかについて考察する.
著者
望月 崇博
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.253-259, 2016-03-15

本稿は, 今年度行われた2回の「こども学科スポーツ大会」の活動報告である. 学生が主体的に「こども学科スポーツ大会」を企画・運営し, その作り上げる過程を記録・考察することを目的とする. その際, 企画・運営段階, 実践内容, 参加学生や実行委員のフィードバックを記載し, 今後も展開すべきより良いスポーツイベントとなるように考察を行った. 1回目は「球技大会」として平成27年9月26日に行い,2回目は「運動会」として平成27年12月19日に開催した「. 球技大会」は, 準備期間も少なかったために既存のスポーツで開催に至ったが,「運動会」は参加者がなるべく運動の優劣がつかないような仕掛け, 種目を企画段階から試行錯誤し, 文部科学省が推奨する「身につけておきたい36 の動き」をベースに新しい種目の開発というレベルまで到達することができた. 実践内容に関しては参加者, 実行委員共に充実が得られたが, 企画・運営・進行レベルで考察した場合, 準備不足, リスクマネジメントの弱さ等, 改善点が挙げられた. しかし, 学生が主体的に参加できるようなイベント開催に至ったことは今後の発展につながるものであった.
著者
神戸 洋子
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.169-174, 2016-03-15

我が国の子育て環境は大きな変化の時期を迎えた. 家族, 地域, 保護者の雇用などの変化による待機児童の解消は大きな課題であるが, それだけでなく保育士, 幼稚園教諭不足の問題は大きい. 現在行われている保育制度改革において重要なのが「質の高い幼児期の学校教育・保育の総合的な提供」「保育の質的改善」「地域の子ども・子育て支援の充実」をバランスよく展開することである. 保育士確保のための対策検討が展開されているが, 待機児童解消のための保育士の量的拡充が主眼となり, 即効性を求めた対策となりがちで, 提供される保育や教育の質についての意識づけまで至っていない. 特に幼保連携型認定こども園においては,「保育教諭」という名称で幼児期の教育を視座に入れた保育が行われるものであり「質の高い幼児期の学校教育・保育の総合的な提供」の実践のための人材確保として検討されている幼稚園教諭および小学校教諭の活用は,多様性を持つ. また高齢者と幼児の触れ合い, 高齢者を社会の一員としてその持つ経験値の社会還元を図るなど, 多様な担い手による保育の意義についても提言するものである.
著者
大須賀 隆子
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.161-167, 2016-03-15

小学3 年から4 年にかけて話し言葉から書き言葉への転換が起こり「保存」や「系列化」の理解が深まってくる.学習内容に抽象的な概念が盛り込まれるようになり,児童によっては,低学年で学習した知識と比較するかたちや具体的に視覚化することによって新しい学習内容を取り込みやすくする「先行オーガナイザー」(Ausubel,1963)が有効になるだろう.「認知カウンセリング」(市川,2004)によって,4つの側面「動機づけ」「メタ認知」「知識構造」「必要知識」からつまずきの原因を探り,学習者が「認知的な学習スキル」を自立的に習得するような支援も望ましい.児童期は仲間の比重が大きくなり,10 歳ころから社会的比較を通して妬みなどのネガティヴな感情が生じる場合がある(澤田,2006)が,「関係性攻撃」行為につながらないように社会的スキルプログラムが必要であり(磯部,2011),日々の教育実践の中で心のパワーと社会性の育成を視野に入れた「開発的・予防的カウンセリング」が求められる(河村,2012).構成的グループエンカウンター(SGE)に継続的に取り組む学級や児童は,受容的で支持的な体験の中で自信や安定感を得,ネガティヴな感情を抱えた児童はSGE 実施の守られた時空間と課題設定の中で感情表出をすることが予測される.ソーシャルスキルトレーニング(SST)プログラムを行った後は,日常の教育活動の中にSST を盛り込む「般化」の機会と,グループアプローチのなかに埋もれがちな児童への個別配慮が求められる(飯田・石隈,2001).
著者
大海 由佳 舘 亜里沙
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-32, 2016-03-15

本研究は、初等音楽教育における新しい「表現教材」として,小学校第6 学年の鑑賞教材として取り上げられることが多い宮城道雄の《春の海》に着目し考察することを目的としている.初等音楽教育では「日本の伝統音楽」の代表的な教材として取り上げられている筝と尺八のための器楽曲《春の海》の歴史的背景と楽曲を分析し,これを踏まえて渡辺論文「《春の海》はなぜ日本的なのか」やルネ・シュメー Renée Chemet の《春の海》編曲作品を基底にした音楽学的視点から《春の海》が「音楽表現教材」となりうる根拠を挙げている.明治時代以降に入ってきた西洋音楽の作曲技法と,それ以前から存在していた邦楽器の響きを組み合わせる形で創作された《春の海》は,児童の表現技術に合った構成と編曲により小学校音楽教育の現場での新しい可能性を持つ楽曲であるといえる.
著者
大須賀 隆子
雑誌
帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Teacher Development, Teikyo University of Science (ISSN:24241253)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.143-150, 2016-03-15

ユニバーサルデザイン教育とは,視覚や触覚に訴える教室環境が準備され,児童同士の関係が支持的で間違いが許容される学級風土のなか,全ての児童が学びに参加できる,多様な学び方への柔軟な対応や必要な学習活動に十分に取り組める授業デザインをめざす教育である.学習障がい(LD),注意欠陥多動性障がい(ADHD),高機能自閉症などのある児童,すなわち軽度発達障がい児のかかわり方を,ユニバーサルデザイン教育の試みから見直し,具体的実践と課題について概観した.ユニバーサルな授業をデザインする際には,学級がどのような軽度発達障がい児やどのような傾向の学習困難感を抱える児童たちで構成されているのかを考慮して「わかる授業」を用意することが求められる.軽度発達障がいのある児童が最も敏感に反応する温かな人間関係と安定した学級風土をつくることが,ユニバーサルデザイン教育の土台づくりである.今後の課題は,従来の通常学級の論理と特別支援教育サイドからの発想とがより統合されていくような支援プランの追求や,いわゆる健常児にも軽度発達障がい児にも共通して見られる各教科の学習困難感に焦点を当てた,ユニバーサルデザイン教育の発想を生かした授業計画や授業方法の実践研究の積み重ねが求められる.