著者
大海 雄介
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ガングリオシド欠損に伴うグリア細胞の異常活性化とグリア細胞の分別的役割を検討するために以下の検討を行った。野生型(WT)及びガングリオシド欠損マウスの脳組織切片を用いて、ミクログリアの異常活性の検討を行った結果、ガングリオシド欠損マウスにおいて、ミクログリアの集積が認められ、さらにM1型マーカーのiNOS抗体で多くのミクログリアが染色された。これによりガングリオシド欠損マウスで集積する活性化ミクログリアは炎症を誘発するM1型という事が示唆された。WT初代培養アストロサイトに発現するガングリオシドのprofileをflow cytometryにて検討した結果、初代培養アストロサイトではガングリオシドGM1, GD1a, GD1b, GT1bが高発現することが明らかになった。ガングリオシド欠損アストロサイトの炎症性サイトカインへの反応性を検討したところ、IL-6による刺激によって、TNF-αの発現が亢進し、さらに抗炎症因子であるSOCS3の発現低下が認められた。以上により、アストロサイトにおいてガングリオシドが炎症性サイトカインに対する反応およびそれらの発現を制御していることが示唆された。また、ガングリオシド欠損アストロサイトにおける細胞膜機能の異常を明らかにするため、[3H]グルタミン酸をWTまたはガングリオシド欠損アストロサイトに添加し、グルタミン酸の取り込み能を検討した結果、ガングリオシド欠損アストロサイトではグルタミン酸の取り込み能の低下が見られた。これはガングリオシドの欠損によるミクロドメイン上の構造変化がグルタミン酸トランスポーターであるEAAT1/2の局在変化を惹起し、グルタミン酸の取り込みを低下させたためと考えられた。さらに、ガングリオシドの欠損は、現在迄に判明していた小脳だけでなく脊髄などの他の部位でもグリア細胞の活性化と神経変性を惹起することが明らかになった。上記結果の一部はJournal of Neuroinflammationに掲載された 。