著者
張 紀久夫 石原 一 大淵 泰司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.343-349, 1997-05-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
27

近ごろ盛んなメゾスコピック系の物理を考えるもう一つの切り口として, 光学応答における非局所性がある. これを取り入れた理論は従来の応答理論と量子電磁気学をつなぐ半古典論であるが, 輻射補正を含む散乱理論の形で線形・非線形応答が記述され, 物質と輻射場の運動を自己無撞着に決めることのできる実行可能な枠組みである. メゾスコピック系では, 感受率だけでなく,輻射シフトや寿命および内部電場が試料のサイズや形状に強く依存するために, 特異な応答が生じるが, そのいくつかの例をモデル計算の結果を用いて示す. これは物質の電磁気学を再構築する試みであると同時に, 応用へ向けた物質開発の新しい指導原理を探究する試みでもある.