著者
川嶋 昌美 大滝 周 高木 睦子 津川 博美 浅野 和仁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.652-656, 2015 (Released:2016-09-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

妊婦は,妊娠により子宮が増大し下大静脈を圧迫することにより,骨盤内の血液循環が悪化し,下半身の体温が低下しやすいと言われている.妊婦の体温低下は,早産や微弱陣痛などさまざまな異常の誘因であると言われている.しかし,早産になる危険性が高い切迫早産と体温低下との関連について明らかにされていないのが現状である.そこで本研究では,初産婦を対象とした切迫早産と体温低下との関連について調査を行った.まず,切迫早産妊婦と正常妊婦を対象に質問紙を用いて体温低下の自覚に関する調査を行ったところ,両者間で有意差が認められ,切迫早産妊婦では体温低下を自覚している者が多いことが明らかとなった.次に,切迫早産妊婦と正常妊婦の体温を測定し,体温低下との関連性について検討した.その結果,腋窩温では有意な差が認められた.これらの結果より,切迫早産妊婦と体温低下に関連があることが推察され,切迫早産妊婦の体温低下に対する介入が必要であると考える.
著者
大滝 周 川嶋 昌美 高木 睦子 津川 博美 福岡 絵美 浅野 和仁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.82-87, 2017 (Released:2017-08-17)
参考文献数
19

足部保温は,臨床の現場や日常生活の中で血流改善や温熱作用による鎮痛効果,リラックス効果などのさまざまな目的で活用されている.しかし,足部保温の体温変動に及ぼす影響について言及している論文は見当たらない.そこで今回,足部保温の1つとして看護の現場で多用されている足浴が体温の変動に及ぼす影響について明らかにすることを目的とし健康な女性を対象に研究を行った.被験者の両下肢を40℃に設定した足浴器(高陽社製,足湯器 冷え取り君FB-C80)の湯に膝下20cmまで15分間浸漬,深部温度と外殻温度を測定した.最初に足浴による保温が体温に及ぼす影響を調べるために,深部温度および外殻温度の体温測定を行った.その結果,深部温度は,保温終了5分後,10分後もほぼ一定の状態で経過した.一方,外殻温度は足浴に伴い上昇し,その後,一定の状態での経過あるいは温度の低下がみられた.次に,保温終了5分後の深部温度および外殻温度について比較を行った.その結果,深部温度と外殻温度に有意な差が認められた.これらの結果より足浴が体温に及ぼす影響として,深部温度の変化はみられないが外殻温度の変化がみられることが示唆された.
著者
川嶋 昌美 大滝 周 浅野 和仁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.654-660, 2019 (Released:2020-02-06)
参考文献数
22

近年,花粉症を代表とするアレルギー性鼻炎の患者は増加の一途をたどり,日本人の約40%が花粉症であると言われている.本症の発症には,肥満細胞に由来するヒスタミンが重要な役割をはたしていることから,抗ヒスタミン薬が治療に多用されているものの,副作用の発現する患者が多くみられることから新たな治療法の開発も望まれている.星状神経節ブロック(SGB)は,スギ花粉症の治療法として見いだされ有効性が報告されているが,治療機序に関しては不明な点が多い.アレルギー性鼻炎の発症にはサブスタンスP(SP)等の神経ペプチドが重要な役割をはたしていることが知られていることから,今回アレルギー性鼻炎ラットを用いてSGBの鼻粘膜における神経ぺプチド産生におよぼす効果を検討した.5週齢の雄SD系ラットに10%トルエン・イソチオシアネート(TDI)を1日1回,5日間点鼻することによって感作ラットを作製した.TDI感作1日目に,被験ラットの両側頸部星状神経節を切除した.切除4日目にTDIを点鼻,アレルギー症状の発現と鼻汁中のSP濃度をELISA法によって測定した.感作ラットのSGBの施行により,TDI攻撃点鼻によるクシャミ,鼻掻き回数ならびに鼻汁中SP濃度が対照ラットと比較し,統計学的に有意に減少した.上述した結果はSGBが鼻粘膜における神経原性炎症を抑制し,アレルギー鼻炎症状の発現を調節している可能性があることを示唆している.