著者
大澤 一郎
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.147-156, 1996-03-15
被引用文献数
1

人間との円滑なコミュニケーションが実行可能な知能エージェントのモデルを提案し,そのモデルの有効性を検証するために実装した知能エージェントシステム「ラスカル」を紹介する.知能エージェントのアーキテクチャとしては,即応(reactive)システムをベースにして,センサ系と動作選択系の間に「因果シミュレータ」と呼ぶ新しい系を導入している.因果シミュレータは,センサ系から得た情報と直前の状況情報に基づく因果の拡散伝搬計算を,因果ネットワークによる超並列協調計算により行なう.そして,センサ系だけからは得られない有用な動作選択用の情報を短時間で求めている.例えば,人間と自然言語でコミュニケーションする場合には,対話相手の意図および信念に関する情報などを適切に管理する.このような知能エージェントモデルに基づいて実装した知能エージェントシステム「ラスカル」は,自分の発話をセンサ系からフィードバックさせて他人の発話同様に解釈するなどして,流れる時間の中で動的に状況の変化を捉え,状況に応じた適切な動作系列を創発的に選択し実行していく.