- 著者
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宮入 一夫
大澤 佑斗
白戸 千裕
鈴木 義孝
- 出版者
- 日本菌学会
- 雑誌
- 日本菌学会大会講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.55, pp.65, 2011
[目的] ヘモリシンは原形質膜に結合し膜孔を形成することにより細胞崩壊を引き起こすタンパク質であり, 細菌, 海産動物, キノコなどにその存在が知られている. キノコヘモリシンは扱いが難しく不明な点が多い. 本研究では, キノコ類のヘモリシンについてその分布, そしてエリンギとスギヒラタケのヘモリシンについていくつかの特性を明らかにした. <BR>[方法と結果] ヘモリシン活性は, ニワトリ保存血を使い, 等張液中で完全溶血の半分の溶血を起こすタンパク量を1HUとした. 分析用キノコは市販品あるいは青森県津軽地方で採取し, -80℃に貯蔵しておいた33科113種類のものを用いた. 凍結キノコを破砕後2倍量の抽出緩衝液(pH8.0)を加え, 遠心分離後, 上清の溶血活性を求めた. 予備実験でキノコの中には抽出時に活性がなく, そのまま1晩放置後活性化するものがかなりあることがあきらかになった. そこでキノコ抽出液を抽出直後のものと一晩放置したものとに分けて活性測定した. その結果, 調査した113種類のうち45種類に明らかな溶血活性が見られた. このうち11種類は1晩放置後に活性が観察された. テングタケ科に属するキノコは12種類中8種類に活性が見られたのに対し, イグチ科の12種類のキノコにはいずれにも活性が見られなかった. 最も活性が強いのは市販のエリンギで1640 HU/g, ついでドクツルタケ1429 HU/g, タマゴテングタケ486 HU/g, ニカワホウキタケ394 HU/g, ヒロヒダタケ71 HU/gの順であった. エリンギのヘモリシンは抽出時にすべて活性化しており, その後活性増加はみられなかった. 一方, スギヒラタケのものは抽出時には全く活性が見られなかったが,5時間後に最大活性(59 HU/g)を示した. エリンギのヘモリシンはきわめて熱に弱く37℃でも1時間後には失活し始めたが, スギヒラタケの不活性型ヘモリシンは20分間の煮沸処理でもキノコ中で安定であった.