著者
大澤 由香里 福盛 貴弘
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.9, pp.47-62, 2011

本稿では、群馬県の郷土かるたである上毛かるたの独特な韻律特徴を音響音声学的な視点で考察することを目的とする。本稿で示した音声学的特徴は以下の3 点である。(1)モーラ数の増減と持続時間長との相関性:かるた経験者はモーラ数が増えても全体の持続時間長はあまり変わらないが、かるた未経験者はモーラ数が増えるごとに全体の持続時間長も長くなった。1 モーラあたりの時間長は、未経験者はバラバラであったが、経験者はモーラ数が増加するほど1 モーラあたりの時間長が短くなっていた。このことから、経験者はかるたの札を読む際に、自身の中にある一定の時間枠におさめようとしていると考えられる。(2)区切れと持続時間長との相関性:経験者は無意識に前半+中と後半を同じくらいの速さで読んでいるのに対し、未経験者はかるた経験者のようにはならなかった。(3)区切れと基本周波数との相関性:経験者は全体的に高低差が少なく、区切れの最後の音を平らにのばしていた。それに対して、未経験者は高低差が大きく、区切れごとに山を描いたような曲線になっていた。さらに経験者は区切れの始めの部分は前の音よりも少し高くはじまる傾向にあることと、区切れの始めの部分では基本周波数曲線が句音調における句頭の上昇調の影響で安定しない波形になるということがわかった。