著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.13, pp.103-122, 2015

本稿では、宮崎駿の長編アニメーション映画『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』を題材としての構造分析を行った。なお、本稿における構造分析は、裏返しモデル(ミハイ・ポップが示したモデル)を援用する手法による。本稿での分析の結果、本稿でとりあげた二作品は、裏返しモデルを適用できる構造からなると解釈できる知見を得た。このことは、宮崎のアニメーション作品における構造上の共通性を論じるうえで有用な知見であると筆者は理解している。
著者
橋本 邦彦
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.23-37, 2012-03-30

The purpose of this article is to present the fishery-related vocabulary which has been collected by our fieldwork, on the Internet and through several documents, accompanied by the dialectal words, the corresponding forms in the standard Japanese language, the meanings with brief comments and the examples in use. It primarily includes the names of fishing boats/ships, tools and methods used in the eastern costal region of the Oshima Peninsula. The research will lead us to the fact that the vocabulary is closely related to the way of local fishing.
著者
吉村 弓子
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.8, pp.3-12, 2010

本稿は、豊橋技術科学大学工学部留学生を対象に豊かな人間性を育むことを目標として実践した、映画を用いた日本語授業の報告である。学生たちは映画の日本語を聞きとり、表情・心情や人間関係を読み取り、日本の文化・社会を理解し、母国の言語・文化・社会を再認識したことが明らかになった。特集 外国語教育
著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.103-122, 2015-03-30

本稿では、宮崎駿の長編アニメーション映画『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』を題材としての構造分析を行った。なお、本稿における構造分析は、裏返しモデル(ミハイ・ポップが示したモデル)を援用する手法による。本稿での分析の結果、本稿でとりあげた二作品は、裏返しモデルを適用できる構造からなると解釈できる知見を得た。このことは、宮崎のアニメーション作品における構造上の共通性を論じるうえで有用な知見であると筆者は理解している。
著者
福盛 貴弘
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.14, pp.179-194, 2016

『時そば』は上方落語のネタ『刻うどん』を三代目柳家小さんが翻案し、江戸落語に滑稽噺として定着させた。その際に『時そば』に移植されなかった、換言すれば『刻うどん』にしかないくだりの一つを本稿で扱った。本稿で取り上げたくだりは、うどん屋をほめる前にいじるくだりである。このくだりを理解するために必要な知識や背景をふまえて解説することが、このエッセイの主たる目的である。
著者
大澤 由香里 福盛 貴弘
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.9, pp.47-62, 2011

本稿では、群馬県の郷土かるたである上毛かるたの独特な韻律特徴を音響音声学的な視点で考察することを目的とする。本稿で示した音声学的特徴は以下の3 点である。(1)モーラ数の増減と持続時間長との相関性:かるた経験者はモーラ数が増えても全体の持続時間長はあまり変わらないが、かるた未経験者はモーラ数が増えるごとに全体の持続時間長も長くなった。1 モーラあたりの時間長は、未経験者はバラバラであったが、経験者はモーラ数が増加するほど1 モーラあたりの時間長が短くなっていた。このことから、経験者はかるたの札を読む際に、自身の中にある一定の時間枠におさめようとしていると考えられる。(2)区切れと持続時間長との相関性:経験者は無意識に前半+中と後半を同じくらいの速さで読んでいるのに対し、未経験者はかるた経験者のようにはならなかった。(3)区切れと基本周波数との相関性:経験者は全体的に高低差が少なく、区切れの最後の音を平らにのばしていた。それに対して、未経験者は高低差が大きく、区切れごとに山を描いたような曲線になっていた。さらに経験者は区切れの始めの部分は前の音よりも少し高くはじまる傾向にあることと、区切れの始めの部分では基本周波数曲線が句音調における句頭の上昇調の影響で安定しない波形になるということがわかった。
著者
桐越 舞
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.9, pp.31-45, 2011

本稿は、日本語共通語における韻文(俳句、短歌)の音読資料を音響音声学的に考察したものである。リズムは時間軸に深く関係するプロソディ要素であるという立場をとり、時間長に特化した分析を試みた。韻文において「句頭子音から次の句頭子音まで」という、ポーズも含むまとまりを韻律フレームとして仮定し、韻律フレーム同士の組み合わせを観察した結果、俳句と短歌それぞれに特有の韻律フレーム型がみられることが明らかになった。俳句では等間型、長短型、短長型の3 つの型が、短歌では長短長短型、短短長短型の2 つの型が観察された。1 番目と2 番目のみの韻律フレーム型の出現頻度をみると、俳句は等間型が全体の56.4%を占め、次いで長短型が27.6%、短長型が16.0%であった。一方、短歌は長短型が77.0%、等間型が23.0%であり、五七五という同様の構成を持つ俳句と短歌でも、各韻律フレーム型の出現頻度は異なっていた。このような特徴は聴覚印象ではっきりと区別可能なレベルの現象ではないと思われるが、この特徴こそが俳句らしさ、短歌らしさを印象づけるひとつの要素になっているものと推察される。
著者
田村 建一
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.125-140, 2011-03-30

本稿は、ドイツの大学で行われている日本語教育のひとつの事例として、トリーア大学日本学科を採りあげ、その教育内容や登録学生数、修士号取得者数などを紹介し、さらに日本学主専攻用の「日本語1」の受講者に対するアンケート調査の結果を報告するものである。アンケートは2007 年1 月から2 月にかけて行われ、主として日本語を学ぶ理由や日本に関する興味の対象を訊ねた。計72 人から得られた回答を分析した結果、「日本語を学ぶ理由」としては、「日本や日本人あるいはその文化に対する関心から」と「言語に対する関心から」の回答がそれぞれ70%を超え、両方をともに挙げた回答も約50%あった。「興味の対象」に関しては、当初の予想に反して「漫画やアニメ等のポップカルチャー」を挙げた回答(26%)はそれほど多くなく、むしろ「歴史」(32%)や「言語」(25%)を挙げた回答がポップカルチャーと同程度の比率を示すのは意外であった。日本学を専攻する学生数の急増が必ずしも社会における流行現象からのみ説明できないように思われる。なお、本調査は、トリーア大学の人文科学系の専攻にバチェラー・マスター制度が導入される以前の、伝統的なマギスター制度のほぼ最後の時期に行われた。
著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.14, pp.45-72, 2016

従来、裏返し構造は、異郷訪問譚に見いだされる構造とされてきた。本稿では、異郷訪問譚の形式ではないアイヌの口承文芸である「ポヌンカヨ-88」・「いびきの話-89」・「人食いおばけ」・「氷の上で」をテキストとし、裏返し構造を援用する観点からの分析を行ったところ、これらは裏返し構造による構成であることが確認できた。異郷訪問譚の形式ではない物語に裏返し構造が見いだせた事例を示す報告としては本稿が最初のものである。
著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.17, pp.19-36, 2019

本稿において、樺太アイヌ民族である浅井タケを話者とする2編の口承テキスト(「水汲みの話①」および「水汲みの話②」)を分析したところ、当該テキストは交差対句により編成されていることがわかった。さらに、かかる交差対句の編成には、述語的論理が優先されることが確認できた。また、当該テキストの場合、こうした述語的論理がストーリーの編成に対しても影響を与えていることがわかった。併せて、本稿では、交差対句の要素対を分類するに際し、主語的対応、述語的対応、主語・述語的対応に基づく手法が有効であることを述べた。
著者
桐越 舞
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.31-45, 2011-03-30

本稿は、日本語共通語における韻文(俳句、短歌)の音読資料を音響音声学的に考察したものである。リズムは時間軸に深く関係するプロソディ要素であるという立場をとり、時間長に特化した分析を試みた。韻文において「句頭子音から次の句頭子音まで」という、ポーズも含むまとまりを韻律フレームとして仮定し、韻律フレーム同士の組み合わせを観察した結果、俳句と短歌それぞれに特有の韻律フレーム型がみられることが明らかになった。俳句では等間型、長短型、短長型の3 つの型が、短歌では長短長短型、短短長短型の2 つの型が観察された。1 番目と2 番目のみの韻律フレーム型の出現頻度をみると、俳句は等間型が全体の56.4%を占め、次いで長短型が27.6%、短長型が16.0%であった。一方、短歌は長短型が77.0%、等間型が23.0%であり、五七五という同様の構成を持つ俳句と短歌でも、各韻律フレーム型の出現頻度は異なっていた。このような特徴は聴覚印象ではっきりと区別可能なレベルの現象ではないと思われるが、この特徴こそが俳句らしさ、短歌らしさを印象づけるひとつの要素になっているものと推察される。
著者
福盛 貴弘
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.15, pp.217-224, 2017

本稿は、田辺聖子さんが執筆した『大阪弁ちゃらんぽらん』(1978 年、筑摩書房:本稿では中公文庫刊 1997 年改版)を読んでの私の読後感を記したエッセイである。田辺聖子さん(1928-、大阪府大阪市此花区;現在の福島区)と私(1970-、大阪府大阪市城東区)は 42 歳差になるが、大阪弁の世代差を感じつつ、私自身のことばや当時の風俗を書き記している。ここでは、7 章めに記された「こまんじゃこ」のエッセイをもとに、子どもの頃の日常生活、駄菓子屋、祭り、夜店などについて振り返っている。
著者
塩谷 亨
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 = Journal of language and culture of Hokkaido (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.93-118, 2016-03-31

本稿では、青森県地方において方言名として認識されている魚種等の名称のリストを提示し、それについてのいくつかの特徴を明らかにした。方言名としてリストされていた名称には、標準和名と全く異なるもの、標準和名と部分的に共通部分を含むもの、標準和名に方言特有の音変化が生じたと思われるもの、標準和名を短縮した形のもの、標準和名と同一形であるが方言名リストに加えられているものが含まれていた。標準和名と全く異なる方言色が濃い名称は、全国的に広く流通していない、地元以外の一般家庭にはあまり馴染みがないような魚に多く見られる傾向があった。一方で、全国的に広く流通し地元以外の一般家庭でもおなじみの食材で商業上も重要と思われる魚の中には、標準和名では一つの魚種となっているのが何らかの基準で細分化され、それぞれに名称が付与されているものが見られた。これは、地元の人達のそれらの魚に対する関心の高さを反映していると思われる。また、大きさや収穫時期を表す<その魚の特徴を表すキーワード>+<その魚が属するグループを指す一般的な名称>という複合的な形式で下位分類を表すものについては、特に大きさや収穫時期(旬の時期と関連)は商品価値にも影響することから、商業上の重要性が大きく関与していると思われる。
著者
塩谷 亨
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.135-146, 2009-03-30

Hawaiian emotional statives can express two meanings, i.e. (1) 'somebody has a feeling of fear, happiness, pleasure, sadness, and so on', or (2) 'something (or somebody) is the cause of the feeling of fear, happiness, pleasure, sadness, and so on'. This paper examines examples of the predicative use and the attributive use of seven popular emotional statives and shows that the meaning (1) is expressed mostly by the statives in the predicative use, while the meaning (2) is usually indicated by those in the attributive use.
著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
no.15, pp.195-216, 2017

従来、裏返し構造は、異郷訪問譚にみとめられる構造上の「共通の約束」と見做されてきた(大林 1979)。一方、大喜多(2016)では、異郷訪問譚以外の形式での裏返し構造の事例が、いくつかのアイヌ口承文芸テキストにおいてはじめて見いだされた。異郷訪問譚ではないいくつかのアイヌ口承文芸テキストに裏返し構造が見いだされた理由に関し、大喜多(2016)では、アイヌ民族における交差対句を好む心性に起因するのではないかという仮説が提示された。本稿はこれを踏まえ、アイヌ民族を話者とするテキスト以外で、これと同様に交差対句が頻用される特徴を有するテキストである聖書テキストに注目することにより、大喜多(2016)の仮説の検証を行った。なお本稿では、聖書の「創世記」の冒頭に収納された 5 編の物語をテキストとした。本稿の検証によれば、テキスト 5 編中、異郷訪問譚ではない 4 編の内の 3 編が裏返し構造により構成されていることが確認できた。この結果は、上述の仮説を支持するものである。
著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 = Journal of language and culture of Hokkaido (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.25-48, 2018

大林(1979)は、裏返し構造を、異郷訪問譚形式の物語に見いだされる特徴的な構造と推認した。一方、異郷訪問譚とは言えない物語にも裏返し構造による物語の存在が、大喜多(2016)ではアイヌ口承テキストに、大喜多(2017)では旧約聖書(日本聖書協会1989)の「創世記」冒頭の5 編の物語テキストに確認されており、当該構造が見いだされる範囲については、異郷訪問譚の範囲に限定するべきではないことが指摘されている。ただし、大喜多(2016)および大喜多(2017)が指摘した事例数は決して多いとは言えない。そこで、本稿では、旧約聖書を検討した大喜多(2017)の知見を前提に、そもそも聖書テキストには、異郷訪問譚とは言えないにもかかわらず、裏返し構造になりやすい性質があると言えるか否かの確認を行うべく、今まで検証されてこなかった、新約聖書(日本聖書協会1989)に収納された物語を題材に、裏返し構造を当てはめる観点による分析を行った。なお、本稿では、新約聖書に収納された「マタイによる福音書」の巻頭の5 編の物語をテキストとした。
著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 = Journal of Language and Culture of Hokkaido (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.195-216, 2017

従来、裏返し構造は、異郷訪問譚にみとめられる構造上の「共通の約束」と見做されてきた(大林 1979)。一方、大喜多(2016)では、異郷訪問譚以外の形式での裏返し構造の事例が、いくつかのアイヌ口承文芸テキストにおいてはじめて見いだされた。異郷訪問譚ではないいくつかのアイヌ口承文芸テキストに裏返し構造が見いだされた理由に関し、大喜多(2016)では、アイヌ民族における交差対句を好む心性に起因するのではないかという仮説が提示された。本稿はこれを踏まえ、アイヌ民族を話者とするテキスト以外で、これと同様に交差対句が頻用される特徴を有するテキストである聖書テキストに注目することにより、大喜多(2016)の仮説の検証を行った。なお本稿では、聖書の「創世記」の冒頭に収納された 5 編の物語をテキストとした。本稿の検証によれば、テキスト 5 編中、異郷訪問譚ではない 4 編の内の 3 編が裏返し構造により構成されていることが確認できた。この結果は、上述の仮説を支持するものである。
著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.99-112, 2013-03-30

本稿では、アイヌ民族であり、かつ、アイヌ語日本語二重話者である知里幸惠の筆記資料に確認される交差対句を紹介している。これらの日本語文章に表出された交差対句は、アイヌの民俗的な修辞表現法による影響である。したがって、知里の日本語筆記資料は、アイヌの民俗性によって文章構造が修辞論的に変異した日本語の実例であると判断できる。
著者
大喜多 紀明
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.103-122, 2015-03-30 (Released:2016-02-15)

本稿では、宮崎駿の長編アニメーション映画『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』を題材としての構造分析を行った。なお、本稿における構造分析は、裏返しモデル(ミハイ・ポップが示したモデル)を援用する手法による。本稿での分析の結果、本稿でとりあげた二作品は、裏返しモデルを適用できる構造からなると解釈できる知見を得た。このことは、宮崎のアニメーション作品における構造上の共通性を論じるうえで有用な知見であると筆者は理解している。