著者
池 晃弘 大瀬 尚子 新谷 康 奥村 明之進
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.74-79, 2019-01-15 (Released:2019-01-15)
参考文献数
15

排卵期に発症した月経随伴性気胸の症例を報告する.症例は40歳女性.39歳時,月経の3日前に右胸痛と呼吸困難感が出現した.右気胸の診断で胸腔ドレナージを施行されたが,気漏が遷延し,前医で胸腔鏡下右上葉部分切除術を施行された.術中,横隔膜に菲薄化病変を認め,ポリグリコール酸シートを貼付された.その4ヵ月後,月経終了後約10日目の排卵期に右気胸が再発し,胸膜癒着術を施行された.しかし,その2ヵ月後の排卵期に右気胸の再々発を認め,当院で再手術を行った.横隔膜腱中心に網目状の多数の小孔を認め,腹腔と交通し肝臓を視認できた.横隔膜病変を切除後縫縮し,酸化セルロースシートで横隔膜及び全肺胸膜を被覆した.病理組織学的に横隔膜内に子宮内膜様間質組織を認め,異所性子宮内膜症と診断した.排卵期に繰り返し発症した本症例は,月経周期に依存しない異所性子宮内膜症の存在を示唆する1例である.