- 著者
-
大矢 幸久
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- E-journal GEO (ISSN:18808107)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.1, pp.92-109, 2023 (Released:2023-04-29)
- 参考文献数
- 58
これまで地誌学習において,カリキュラム作成者や授業者によって恣意的・主観的に設定された「地域性」や「地域的特色」を子どもに無批判にとらえさせる危険性が指摘されてきた.本稿では,地域を社会的に生産された構築物としてとらえ,それを吟味・批判し,地域像の再構成や新しい地域像の創造を目指す地誌学習の授業構成を明らかにした.イングランド地理教育研究やジオケイパビリティ・プロジェクトの成果を踏まえると,社会構成主義的アプローチだけでなく,知識の実在性を重視する社会実在主義的アプローチに基づく地誌学習の構想が求められる.検討の結果,学術研究の成果に基づく学問的知識と子どもの生活経験に基づく日常的知識を問いによって結び付けて地理的概念の獲得・伸長を図る「構築物–再構成型地誌学習」の構成原理および授業過程モデルを提起した.