著者
大石 惇喜 白石 博
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-28, 2018-09-26 (Released:2019-04-02)
参考文献数
9

保険会社において,複合ポアソン過程に基づいた古典的リスクモデルを考えるとき,保険会社の余剰金がある境界を上回った部分に関して株主に配当として支払うという配当戦略問題がある.最適な配当境界は,破産時刻までに支払われる累積配当金現在価値の期待値を最大化するものとして与えられる.本論文ではまず,古典的リスクモデルを仮定し,サープラス過程(保険会社の余剰金を表す確率過程)のサンプルパスから最適配当境界の推定量をM-推定により構成する.M-推定量の一致性を示す際には目的関数の一様収束性が重要となり,それはGlivenko-Cantelliの定理として知られている.Glivenko-Cantelliの定理は関数の一様収束性を,関数族の大きさを測るエントロピーによって述べたものである.本論文では一様エントロピーの有界性を用いて関心のある関数の一様収束性を示すことで,構成した推定量の一致性を証明する.そのために,関心のある関数族が,関数の複雑度を表すVC-指数が3のVC-サブグラフクラスであることを示す.最後にシミュレーションを通して目的関数の一様収束性と,推定量の一致性について確認する.