著者
大浦 武彦 中條 俊夫 岡田 晋吾 大村 健二 足立 香代子 大石 正平
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.377-383, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

目的:褥瘡の治癒過程に大きな影響を与える看護・介護・治療の要因を統一し,栄養介入が栄養状態と褥瘡治癒に及ぼす効果を多施設共同ランダム化割付並行群間比較試験で検討した.方法:ステージIII~IV(NPUAP分類)の褥瘡が仙骨,尾骨,大転子,踵のいずれかにあり,経管栄養を必要とする低栄養患者を対象とした.対照群は研究登録時と同じ,または基礎エネルギー消費量(BEE)×活動係数1.1×ストレス係数1.1~1.3とし,介入群はBEE×1.1×1.3~1.5を目標投与エネルギー量とした.研究期間は12週間とした.栄養剤はラコール®配合経腸用液に統一し,体圧分散マットレスの種類,体位変換の方法,治療用薬剤,創傷ドレッシング材を規定した.評価は褥瘡サイズ(長径×短径)および栄養状態(身体指標および臨床検査値)の推移,有害事象で行った.目標症例数はそれぞれ30症例以上とした.結果:体重あたりの1日平均投与エネルギー量は対照群29.1±4.9 kcal/kg(mean±SD)(n=29),介入群37.9±6.5 kcal/kg(n=21)であった.褥瘡サイズは栄養介入の有無と観察週数の交互作用に有意差(P<0.001)が認められた.栄養状態は体重,腹囲,Cu(P<0.001),腸骨棘上部皮下脂肪厚(P<0.01),大腿囲,Prealbumin(P<0.05)に対し,有意差が認められた.本研究に起因する有害事象の発現率に有意差は認められなかった(P=0.360).また,主成分分析および共分散構造分析により,介入群は特に褥瘡サイズの減少および腹囲,腸骨棘上部皮下脂肪厚の改善速度が顕著であり,栄養介入が褥瘡サイズの減少とこれらの身体指標に直接的な影響をもたらすことが検出された.結論:積極的なエネルギー投与を行うことにより,通常の栄養管理と比較して栄養状態がより改善し,かつ褥瘡の治癒が促進された.また,栄養介入は褥瘡サイズの減少に直接的な影響を及ぼすことが検出された.