著者
佐藤 明正 大石 英明 阪下 哲司
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.91-97, 1995-01-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
15
被引用文献数
1

両性界面活性剤アルキルジアミノエチルグリシン (ニッサンアノン#300®, ADGと略記) の結核菌に対する殺菌効果を高める目的で, ADGにエタノールを添加した溶液 (Et-ADGと略記) を調製し殺菌効果を検討した.培養結核菌をADGの100倍希釈溶液 (1/100ADG) で1分間および10分間処理した場合, その生存菌数はそれぞれ500cfu/0.1mlおよび25cfu/0.1mlであった. 一方, エタノールを23v/v%添加した溶液 (23%Et-1/100ADG) では各々7cfu/0.1mlおよびOcfu/0.1mlとなった.喀痰中の結核菌に対しては, ADGの50倍希釈溶液 (1/50ADG) およびエタノールを23v/v%添加した溶液 (23%Et-1/50ADG) を用いてその殺菌効果を比較した. この場合においてもADGの殺菌効果はエタノール添加で高まった.30%Et-1/50ADGおよび1/50ADGで処理した結核菌の形態を走査電子顕微鏡を用いて観察した. 両者に菌体の粘着化・融解化が観察されたが, その程度は前者でより強かった.ADGの殺菌作用は結核菌を粘着化・融解化させて発育不能に導くことにあると推察されたが, ADGへのエタノール添加はその作用を高めることが観察された.