著者
大窪 善人
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会学研究科篇 (ISSN:18834000)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-14, 2016-03-01

本稿は、1983年に西ドイツで行われた核ミサイル配備に反対する市民的不服従にたいするハーバーマスの議論についての考察である。ハーバーマスは市民的不服従を、米国の成熟した政治文化と政治・法理論を媒介として、民主的法治国家の成熟をはかるテストケースに位置づける。その際に重要な位置づけをもつのは「合法性と正統性」の概念である。この概念対は、国法学者シュミットの政治・法理論において重要な意味をもっている。本稿では両者の議論の特徴を対比することを通じて、ハーバーマスの市民的不服従論の正統化根拠が、法治国家における法と道徳の補完関係、そして、可謬主義的な政治文化に求めることができるということを明らかにする。市民的不服従正統性と合法性道徳原理と民主主義原理決断主義対可謬主義