著者
大竹 晶子 高橋 浩一郎 七沢 潔 濵田 考弘 原 由美子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.2-38, 2022 (Released:2022-04-20)

2021年夏、東京に4度目の緊急事態宣言が出される中、東京オリンピック・パラリンピックが開催され、時を同じくして新型コロナウイルスの第5波が到来した。4年に1度の国際スポーツ大会の開催と同時に、同じ国内で医療崩壊が起こるという想像しがたい事態と、そこに至る過程を、テレビはどのように報道したのか。番組メタデータに基づく量的分析と、開催前、開催直後、感染爆発期の3つの時点の番組視聴に基づく質的分析により検証した。 その結果、会期中のテレビの新型コロナ報道が、ニュースの時間配分量、報道スタンス、テレビが本来果たすべき機能など、さまざまな面において東京オリンピック・パラリンピックの影響を受けていたことがわかった。
著者
青木 紀美子 大竹 晶子 小笠原 晶子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.2-28, 2022-05-01 (Released:2022-06-20)

多様性とインクルージョンの推進は、公共サービスとしてのメディアが、情報が氾濫する時代にあって信頼を得て存続するために不可欠な、最も重要な課題のひとつである。 多様性には、ジェンダー、性的指向、人種、障害の有無、居住地域などいろいろな面がある。テレビのオンスクリーン・放送内容の多様性を分析する私たちの最初の調査では、最も基本的な女性・男性のバランスがテレビの登場人物においてどう表れているかに注目した。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ報告で2021年、日本は世界156か国中120位という低さにとどまるなど、男女平等の推進が遅れていることを考慮した。 調査では、まずデータにより現状を可視化することをめざした。2021年6月に行ったトライアル調査の結果もふまえ、テレビ番組全体の登場人物については番組メタデータをもとに年代別、職業分野別、番組ジャンル別に女性、男性の数を比較し、ニュース番組についてはコーディング分析により、発言した、もしくは発言が引用された人物について、名前の表記やニュースの中での役割、取り上げた話題を含めたより詳しい比較・分析を行った。 調査の結果、女性の登場はテレビ番組全般で40%以下、ニュース番組では30%にとどかず、男性に比べると半分以下にとどまった。ニュース番組では、キャスターなどレギュラー出演者を除いたニュース項目の登場人物では偏りがさらに大きく、男性が女性のほぼ3倍となり、このうち名前の表記があった人では男性が女性のおよそ4倍に上った。 ニュースの話題別にみると、政治、科学・医療、スポーツニュースでは男性が女性の3倍以上、職業・肩書別にみても偏りは大きく、登場した延べ人数が最も多かった政治家では男性が女性の5倍、最も差が大きかった医師では男性60人に対して女性が1人だった。 年代・年層別の差も大きく、テレビ全般では女性は20代が最も多く、30代以降は年代が上がるほど減り、ニュース番組でも19-39歳の年層が最も多かった。これに対して男性はテレビ全般では30~50代が最も多く、ニュース番組でも40~64歳という年層が過半数を占め、テレビに出ているのは「若い女性と中高年の男性」というこれまでにも指摘されてきた構図が浮き彫りになった。 またテレビの女性、男性の取り上げ方を視聴者がどう見ているかを探ったアンケート調査では10代~30代、その中でも男性より女性に、違和感などを抱いたことがあると回答した人が多かった。違和感などを抱いた番組ジャンルは登場人物の男女比に偏りが大きい番組ジャンルと重なった。