著者
鈴木 幸人 大縄 将史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

既に提案されている圧縮性Navier-Stokes方程式に対するGENERICによる定式化の手法を調査・検討し,今後の利用に向けて理論を整理した.またvan der Waalsの状態方程式をもつ圧縮性流れに対して,そのGENERIC定式化に離散変分導関数法とmimetic finite difference法を適用することを検討した.さらに,非圧縮流れに対する三次元渦度方程式にCahn-Hilliard方程式あるいはAllen-Cahn方程式を組み合わせたdiffuse interface modelに対しても同様にGENERIC型の定式化と構造保存型数値解法の適用性を検討した.その結果,このdiffuse interface modelに対しては歪対称のPoisson括弧と半負定値対称の散逸括弧を用いた定式化が可能であり,それにmimetic finite difference法と離散変分導関数法を適用できることが明らかになった.そこで,それらに基づき,三次元Euclid空間上のde Rham複体の構造を正しく受け継ぐとともに,運動エネルギーとヘリシティが非粘性流れにおいては正確に保存し,粘性流れに対しては適切に散逸する数値計算手法を開発した.特に,これは流れの物理的解釈において重要な意味をもつ運動エネルギー,ヘリシティ,エンストロフィーの収支をそのまま離散式で模擬できるような計算手法になっている.また実際にC++言語による計算プログラムを作成し,それを用いて周期的に配置された液滴の表面張力による振動運動の計算を行って,開発した数値解析手法の有効性を確認した.