著者
大西 剛
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究計画では1)単結晶基板表面上の分子層ステップの形状と密度を制御した上で、2)ヘテロエピタキシーと電界効果トランジスターへの応用、そして3)界面修飾による低次元導電層の形成を行う予定であった。テンプレートとなるSrTiO_3単結晶基板表面の分子層ステップの密度を制御する上で必要なSrTiO_3ホモエピタキシーをPLDにて行うに当たり、レーザーによる原料蒸発時にSr/Ti比がずれることが明らかとなると共に、それが分子層ステップの形状(ファセットの有無)を支配することがわかった。理想的なホモエピタキシーにはアブレーション条件を正確に制御し、Sr/Ti比が1となるようにすることが必要である。次に、そうして得たホモエピタキシャル薄膜が堆積された基板がなぜか導電性になってしまうことがわかった。これは真空中のPLDによるSrTiO_3薄膜の堆積によって、堆積した薄膜はもとより基板が酸素欠損していることに寄ることを突き止めた。詳細な実験の結果、導電性は酸素欠損した薄膜よりも酸素欠損した基板が担っており、薄膜が基板から酸素を引き抜いていることによることがわかった。この現象は酸化物薄膜であれば堆積する材料にはあまり寄らず、真空中でPLDによって薄膜を形成する際に避けられない現象であることがわかった。このSrTiO_3基板からの酸素の引き抜きをアブレーション条件、酸素分圧、基板温度を制御することで液体He温度で40,000cm^2V^<-1>s^<-1>を超える高移動度2次元導電層が作製できることがわかった。またこれらの導電性を表面形状を崩さすに消し去るには大気中での低温アニールが有効であることを突き止めた。