- 著者
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大西 成長
佳山 良正
- 出版者
- Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
- 雑誌
- 生物環境調節 (ISSN:05824087)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.4, pp.103-109, 1980
閉鎖的環境であるハウス栽培では, 雨による溶脱が少なく, とくに過剰厩肥を投入する場合, 塩類の集積が作物の生育に大きな障害になる.本研究はこのような環境下におけるトマトの生産反応と土壌中の塩類の動向を追求してみた.ビニールハウスは71.5m<SUP>2</SUP>のもの2棟で, 各棟を2分して牛ふん厩肥50t/10a施用区と5t/10a施用区とした.各区の畝は, その底部にビニールシートを敷き, 溶脱水は200l容ポリタンクに導くようにした.50t区は化学肥料は施用しなかったが, 5t区は尿素: 50kg, 塩化カリ: 80kg, 熔リン: 80kg/10aを施用した.得られた結果は次のようである.<BR>1) 50t区と5t区のトマトの地下部を含む植物体重量と果実収量に大きな差はみられなかった.<BR>2) 50t区の土壌pHは第1作より第2作が終始高い値を示し, 定植後24週でも8.0を示し, 以後低下して7.0を保った.5t区の第2作目では定植後16週目で7.0に近い値を示したが, その後低下して5.0に近づいた.土壌のECは2作目で定植後3mmhoに達し, 以後低下, 16週後には2mmho以下になった.5t区は栽培期間を通じて0.5~1.0mmhoであった.<BR>3) 厩肥中の塩類の大部分は可溶性塩類であって, 生育初期では, 50t区の土壌中N-酢酸アンモニウム濾液のKが, 25me/100gも測られた.これは置換態Kと可溶性Kの合量である.この量は定植後16週目に10me, 32週後には7~5meと徐々に低下した.これは植物による吸収もあるが, 溶脱量も大きい.5t区は栽培期間を通じて, 5me以下であった.<BR>4) N-酢酸アンモニウム濾液中のCa量も異常に高かったが, これは置換態のCa+水溶性Caのほかに酢酸アンモニウムに溶ける土壌中のCaCO<SUB>3</SUB>などが原因であろう.<BR>5) 過剰厩肥の施用によって, 土壌中には塩類が多く集積するが, 有底ビニールハウスでは, トマトに障害がみられなかった.これは排水が良好なため, 溶脱が促進されたためと考えられる.