著者
伊藤 実
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.17-20, 1969-08-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
4

土壌の保水性をpF曲線から検討することは土壌の作物への水分供給の研究にとって重要である.しかしすでに明らかにしてきたように, 土壌の乾燥処理の仕方によってその保水性は変化することがわかった.このことから, 土壌の保水性を考究するには土壌のうける乾燥の強さや過去の履歴を知ることが必要となる.ここでは土壌の乾燥程度と粒子との関係について考察してみる.粒子自身の保水性に変化を生ずるようになるのは多くの場合風乾程度 (≒pF6前後) の乾燥をうけるときである.他方, それ以下の乾燥では粒子そのものの保水性の変化よりも粒子系としての保水性の変化を示すことになる.すなわち, 乾燥があまりつよくないと, 粒子そのものに変化はないが, 粒子が互にくっついて集合的なものとなり, 土壌の保水性は単体粒子系としてよりも集合体粒子系としての性質を示すことになる.このために集合体粒子が土壌に占める割合が多くなると (乾燥が次第に進んでいくと考えられる) , 集合体粒子は水分を保持する比表面積が単体粒子よりも小さいことから, 土壌全体の保水性は低下していく.そして, 一度このような土壌体になったものにふたたび水を加えても, この低下した比表面積分は保水性には影響を与えず, 全体として保水性が低下した状態のままで存在することになる.しかしながら, これらの集合体に超音波をあてて集合体を構成している粒子を単体粒子系にしてその保水性をみると, それは生土粒子のそれとほとんど同じ特性をもっている.このように, ある範囲までの乾燥程度では土壌粒子そのものの保水性に変化はないが, 構造的なものによる保水性の変化を示す.しかし, いったん風乾状態をへると保水性に関して土壌粒子はもはや生土の粒子とは質的に異なるために, 土壌系全体が生土とはちがった値をとることになる.土壌と作物との関係をpF曲線からみるとき, 土壌の乾燥に関する履歴もその研究対象にする必要があることが以上のことからわかる.作物の地下環境の1つである土壌水分は圃場を形成する土壌の過去や将来うける乾燥との関連でとらえ, 作物生育に影響する有効水分量やしおれ点などの土壌水分恒数をきめて, 作物に供給する水分量を計画することが重要となる.
著者
藤原 弘 岩根 正昭
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.15-18, 1968-08-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
5

著者らは, 動物の加速度の耐久限界を求めるため, 被験動物には, イヌ40頭, ウサギ50羽, モルモット60匹, ラット150匹, ハムスター50匹およびカエル8匹を用いた.加速度の種類は, 頭から足の方向に作用する+Gzと, 足から頭の方向に作用する-Gz, および体軸に直角に作用する横軸のGxの3種である.イヌは+10Gx, ウサギ, モルモットおよびラットは+15Gz, -5Gz, 15Gxおよびカエルは+15Gz, -15Gzである.これらの負荷からそれぞれの動物が全例死亡するまでの時間, 半数例死亡するまでの時間, および全例が生命保続できる安全域時間を検討した.結果はつぎのとおりである.(1) イヌに+10Gzを負荷した場合, 100%死亡する時間は8~11分で, 50%生存には3~5分, 安全域は1分以内である.(2) ウサギに+15Gzを負荷した場合, 100%死亡する時間は7~9分で, 50%生存には5~7分, 安全域は2分以内である.また, -5Gzの場合, 全例死亡10~13分, 50%生存5~7分, 安全域2分以内で, 15Gxの場合は, +Gz, -Gz負荷より延長し, 100%死亡には13~15分, 50%生存には8~11分, 安全域6分以内である.(3) モルモットに+15Gzを負荷した場合, 100%死亡する時間は17~20分, 50%生存には13~15分, 安全域は2分以内である.-5Gzの場合, 100%死亡20~23分, 50%生存には5~8分, 安全域3分以内で, 15Gxの場合, 100%死亡21~25分, 50%生存には9~11分, 安全域6分以内である.(4) ラットに+15Gzを負荷した場合, 100%死亡する時間は14~18分, 50%生存9~11分, 安全域は0.5分である.また, -5Gzの場合, 100%死亡15~20分, 50%生存には1~3分, 安全域0.5分で, 15Gxの場合, 100%死亡する時間21~25分, 50%生存する時間13~15分および安全域5.5~6.5分でモルモットとほぼ同様である.(5) ハムスターに+15Gz, -10Gzおよび15Gxを負荷した場合, ウサギ, モルモット, ラットに比べて耐久時間が著しく延長し, いずれの負荷にも強い.(6) カエルに+15Gz, -15Gzを負荷しても耐性が高く, 1時間負荷においても全例死亡しない.また, カエルは哺乳類に比べて著しく耐久度が高い.
著者
大西 成長 佳山 良正
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.103-109, 1980-12-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
22

閉鎖的環境であるハウス栽培では, 雨による溶脱が少なく, とくに過剰厩肥を投入する場合, 塩類の集積が作物の生育に大きな障害になる.本研究はこのような環境下におけるトマトの生産反応と土壌中の塩類の動向を追求してみた.ビニールハウスは71.5m2のもの2棟で, 各棟を2分して牛ふん厩肥50t/10a施用区と5t/10a施用区とした.各区の畝は, その底部にビニールシートを敷き, 溶脱水は200l容ポリタンクに導くようにした.50t区は化学肥料は施用しなかったが, 5t区は尿素: 50kg, 塩化カリ: 80kg, 熔リン: 80kg/10aを施用した.得られた結果は次のようである.1) 50t区と5t区のトマトの地下部を含む植物体重量と果実収量に大きな差はみられなかった.2) 50t区の土壌pHは第1作より第2作が終始高い値を示し, 定植後24週でも8.0を示し, 以後低下して7.0を保った.5t区の第2作目では定植後16週目で7.0に近い値を示したが, その後低下して5.0に近づいた.土壌のECは2作目で定植後3mmhoに達し, 以後低下, 16週後には2mmho以下になった.5t区は栽培期間を通じて0.5~1.0mmhoであった.3) 厩肥中の塩類の大部分は可溶性塩類であって, 生育初期では, 50t区の土壌中N-酢酸アンモニウム濾液のKが, 25me/100gも測られた.これは置換態Kと可溶性Kの合量である.この量は定植後16週目に10me, 32週後には7~5meと徐々に低下した.これは植物による吸収もあるが, 溶脱量も大きい.5t区は栽培期間を通じて, 5me以下であった.4) N-酢酸アンモニウム濾液中のCa量も異常に高かったが, これは置換態のCa+水溶性Caのほかに酢酸アンモニウムに溶ける土壌中のCaCO3などが原因であろう.5) 過剰厩肥の施用によって, 土壌中には塩類が多く集積するが, 有底ビニールハウスでは, トマトに障害がみられなかった.これは排水が良好なため, 溶脱が促進されたためと考えられる.
著者
田中 和夫 島地 英夫
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.59-64, 1992-06-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
9
被引用文献数
5 4

トマトの大量苗生産に必要な高密度苗生産技術の一つとして接触刺激の利用を検討した.1) 作動時刻, 走行速度および高さを任意に変えることができる自動走行式の接触刺激装置を作成した.この装置を用い, トマト苗の生長部に30分に1往復の頻度で, 走行速度は10m/minに設定して接触刺激を行った.2) トマト苗の生長部への接触刺激を行うことにより, 徒長防止だけでなく, 主茎長を中心とした生育の均一化や乾物率の上昇による苗質向上の効果が認められた.なお, 接触刺激によるトマト苗の乾物生産能力の低下はほとんどなく, また花芽の発育にも悪い影響を認めなかった.3) 接触刺激を利用することで, トマトの苗生産は最大栽植密度を展開葉数が4~5枚までの場合で約1, 000株/m2, 展開葉数が6~7枚までの場合で約400株/m2まで高めることが可能と考えられた.4) 生育初期から生育速度に個体間差の大きいトマト培養苗の成苗化過程において, 生育の均一性を高める顕著な効果が接触刺激により得られた.
著者
稲田 勝美
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.111-118, 1971-03-10 (Released:2010-06-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1

市販の農業用透明プラスチックフィルムの分光透過性を紫外, 可視および赤外の各部にわたって測定した.プラスチック材料の異なるフィルム間では, 可視部透過率に大差はないが, 紫外部および赤外部透過率に明らかな差が認められた.300nm以上の紫外線透過率はノイファン, ダイスカイおよびサクビとビニルの一部で低いが, その他のフィルムでは十分に高かった.赤外部ことに厳寒期の保温効果に関係のある7~15μの透過率はポリエチレンで最も高く, ビニルで最も低く, サクビがその中間であった.フィルムの材質が同じ場合, 銘柄の差や使用中の汚染による透過性の変化は短波長ほど大きく, 赤外部ではごくわずかであった.この理由は本質的には添加剤による吸収ならびにフィルム内外の粒子による光散乱の波長依存性によるが, 分光光度計の散乱光受光特性とも関係があることを考察した.おわりに, フィルム試料を提供された東京大学農学部高橋和彦氏および埼玉県園芸試験場上浜龍雄氏に厚く感謝いたします.
著者
高橋 史樹
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-33, 1975-03-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
13
被引用文献数
15

カブトエビは水田の代かき後数日で出現するが, その生態学的特徴には一年生水田雑草と類似のものが多い.これらの雑草の種子の中には光の刺激によって発芽するものがあるので, このような現象がアジアカブトエビ卵の孵化についてもみられるか否かを検討したところ, 光の効果を受けることがわかった.20℃で, いろいろな日長および全明, 全暗の条件下で, 茨木市内の水田土壌に含まれている卵および土壌を除去した飼育貯蔵卵に注水し, 孵化の状況を観察したところ, 8~24hrLの日長下では短期間に高い孵化率がみられたが, 4hrL以下の日長下では孵化が遅れ, とくに全暗条件下ではその遅れが著しかった.
著者
山家 芳子 斎藤 隆
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.261-264, 1999-12-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
7

R. multiflora var. adenochaeta, R. withuraianaおよびR.hybrida Hort.の数種の園芸種を用い, 組織解離酵素ドリセラーゼの1%液で処理したバラの種子の発芽に対する温度の影響について検討した.1) R.multiflora var.adenochaetaの種子をドリセラーゼ1%液で36時間処理した後, 5, 10, 15, 20および25℃の温度で発芽試験を行った結果, 20℃区で発芽は最も早く, 15℃区では若干遅れたが, 両区の最終発芽率は約75%の高発芽率を示した.10℃区では発芽はさらに遅れたが, 最終発芽率は82%と高かった.5℃区では発芽は著しく遅れたが, 41日目までに78%の発芽率を示した.25℃区では発芽は比較的早かったが, 最終発芽率は36%と低かった.2) R. wichuraiana, R. hybrida Hort. の‘Carolina’, ‘Playboy’およびRamblerの種子をドリセラーゼ1%液で48時間処理した後, 5, 10, 15, 20および25℃の温度で発芽試験を行った結果, いずれの品種でも10~20℃の範囲で発芽がみられたが, 温度による差は少なく, R.wichuraianaで10%前後, ‘Carolina’では15~20%, ‘Playboy’では25%前後, Ramblerでは5~10%の発芽率を示し, 品種によって若干差がみられた.いずれの品種でも5℃および25℃区では発芽はみられなかった.3) バラの種子の発芽に対する最適温度は10~20℃の範囲にあり, 5℃では発芽は遅れるが, 長期間を要すれば十分に発芽可能であり, 25℃では発芽率が低く, 高温過ぎると考えられた.
著者
石井 雅久 伊東 正 丸尾 達 鈴木 皓三 松尾 幸蔵
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.103-111, 1995-06-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

完全制御型植物工場の電力コストを削減させるために, 一般電力と比べて割安な深夜電力 (11pm~7am) の利用について, 『岡山サラダナ』を供試し, 光強度と照射時間の関係から調査・検討を行った.生育中期までは, PPFDならびに照射時間の増加とともに葉の生体重および乾物重は増加したが, 後期から腋芽葉の発生や葉捲きが多く発生し, サラダナの生育は遅延し, 生産物の品質は低下した.また, 1回の明期に照射する光量子の積算値が等しければ, サラダナの生育や品質も同様になると推察された.以上のことから, 本試験の照射条件のなかでは, PPFDが400~420μmol・m-2・s-1, 照射時間が8時間で生育したサラダナが生育や品質などの面から効率的であることがわかり, 深夜電力の利用による栽培の実用的可能性が示唆された.
著者
角 明夫 林田 裕樹 竹之下 佳久 下敷領 耕一
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.191-197, 2001-09-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
14

A possibility of paddy rice (Oryza sativa) cultivation with reflective mulching materials as a tool of low input and high-yielding culture was examined. The albedo increased and water temperature in the daytime decreased by mulching of white styrofoam board or reflective film over the interrow space. Leaf area indexes in the mulching plots decreased as compared to the control plot due to the decline in leaf weight ratio and the increase in specific leaf weight. By mulching, the dry matter production at early growth stage increased in a year 1999 under relatively low sunshine but it tended to decrease in another year 2000 under intense sunshine, high temperature and low humidity. Furthermore, dry matter production in the latter half of growth tended to increase in both years, and the percentage of ripened grains elevated as well as the number of ripened grains. In both years, the grain yield increased about 10% and the damage due to grass leaf roller (Cnaphalocrocis medinalis) reduced, by mulching.
著者
大西 成長 佳山 良正
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.103-109, 1980

閉鎖的環境であるハウス栽培では, 雨による溶脱が少なく, とくに過剰厩肥を投入する場合, 塩類の集積が作物の生育に大きな障害になる.本研究はこのような環境下におけるトマトの生産反応と土壌中の塩類の動向を追求してみた.ビニールハウスは71.5m<SUP>2</SUP>のもの2棟で, 各棟を2分して牛ふん厩肥50t/10a施用区と5t/10a施用区とした.各区の畝は, その底部にビニールシートを敷き, 溶脱水は200l容ポリタンクに導くようにした.50t区は化学肥料は施用しなかったが, 5t区は尿素: 50kg, 塩化カリ: 80kg, 熔リン: 80kg/10aを施用した.得られた結果は次のようである.<BR>1) 50t区と5t区のトマトの地下部を含む植物体重量と果実収量に大きな差はみられなかった.<BR>2) 50t区の土壌pHは第1作より第2作が終始高い値を示し, 定植後24週でも8.0を示し, 以後低下して7.0を保った.5t区の第2作目では定植後16週目で7.0に近い値を示したが, その後低下して5.0に近づいた.土壌のECは2作目で定植後3mmhoに達し, 以後低下, 16週後には2mmho以下になった.5t区は栽培期間を通じて0.5~1.0mmhoであった.<BR>3) 厩肥中の塩類の大部分は可溶性塩類であって, 生育初期では, 50t区の土壌中N-酢酸アンモニウム濾液のKが, 25me/100gも測られた.これは置換態Kと可溶性Kの合量である.この量は定植後16週目に10me, 32週後には7~5meと徐々に低下した.これは植物による吸収もあるが, 溶脱量も大きい.5t区は栽培期間を通じて, 5me以下であった.<BR>4) N-酢酸アンモニウム濾液中のCa量も異常に高かったが, これは置換態のCa+水溶性Caのほかに酢酸アンモニウムに溶ける土壌中のCaCO<SUB>3</SUB>などが原因であろう.<BR>5) 過剰厩肥の施用によって, 土壌中には塩類が多く集積するが, 有底ビニールハウスでは, トマトに障害がみられなかった.これは排水が良好なため, 溶脱が促進されたためと考えられる.
著者
廖 汝棠 田辺 賢二 田村 文男 板井 章浩
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.21-28, 1997
被引用文献数
2

ニホンナシの花や幼果の耐凍性に対する脂質代謝と温度の影響を検討するために, "二十世紀"における花や幼果の耐凍性の変動ならびに花と幼果の脂質および構成脂肪酸を調べた.気温の上昇に伴って, 発育ステージは進行し, 主要リン脂質であるPC, PEおよび主要糖脂質であるDGDG, MGDGの量は徐々に減少し, 耐凍性も弱くなる傾向を示した.一方, 耐凍性は満開後に急激に弱まるとともに, 総脂質の構成脂肪酸の中で, リノレイン酸の割合は減少し, 逆にリノール酸は著しく増加した.各脂質の構成脂肪酸についてみると, PA, PC, PE, MGDGでは主にリノレイン酸の減少とリノール酸の増加, PI, GDGDについてはリノレイン酸の減少とパルミチン酸の増加がみられた.また, 各脂質の構成脂肪酸の不飽和度は満開後に低くなる傾向があった.以上の結果より, ニホンナシ開花期と幼果期には, 気温増加と開花および幼果の発育によって生体膜における脂肪酸の組成の違いが生じた結果, 膜の安定性, 物質の輸送, 代謝等の生理機能の変化が起こり, 耐凍性の差異が生じるものと考えられた.
著者
小森 照彦
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.107-110, 2002-03-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
6
被引用文献数
1

This experiment was carried out to determine the effect of low light intensity from May 15 to August 31 (3.5 months) on the growth of mericlonedCymbidiumorchid. In the two cultivars (Cymb. Rose Wine‘Fruity Drop’ andCymb. Great Katty‘Little Louransan’) that were grown under shaded conditions for the period, their fresh weight was lower than the control's, especially the root's, which was more than 50% lower at 3 months after the low-light treatment. The number of leaves and leaf length were also smaller even 1 year after treatment. In regard to leads, shadedCymb. Rose Wine‘Fruity Drop’ showed much reduced development of new lead, and the ratio of plants that developed no lead was also higher in comparison with the control. ForCymb. Great Katty‘Little Louransan, ’ the ratio of plants that developed new leads was not different between the treatment, but their growth was poorer in shaded plant.
著者
上和田 勉
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.135-140, 1990-12-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
17
被引用文献数
4 5

A new technique for cultivating sweet potatoes (I pomoea batatas L.) in a solution culture in order to make root tuber formation in the air space of a culture box was developed. The effects of rockwool slab in the medium, and also the composition and supplying method of nutrient solution were examined to maximize root tuber yield. This technique was also applied to compare the yield differences among cultivers. Cultiver‘Kokei No. 14, ’‘Kotobuki’and‘Narutokintoki’were used in this experiment. The plastic culture box (W 400×D 700×H 320 mm) was separated into two parts, i.e., the solution layer which was set in the rockwool slab of 2 cm in thickness and the air space of about 30 cm.Seedlings were provisionally planted in sand medium for about twenty days before trans-planting until the root length was elongated to 30-40 cm so that the root reached the solution layer when it was planted at the top of the culture box. Absorbing root was grown in the solution layer, and root tuber was tuberized in the air space. The results of the experiment are as follows.1) From the experiment on the relation between root tuberization and medium composition, yield of root tuber was increased by 1.5 times when standard solution (Kasugai's solu-tion-B) were used in the rockwool slab compared to the case without the rockwool slab.2) From the experiment on the relation between the root tuberization and the composition of the culture solution, it was found that root tuberization was improved and the yield was increased by 1.45 times when the concentration of NH4N03 in Kasugai's solution-B was doubled for 30 days after transplanting, and subsequently, concentrations of KCl and KH2PO4 were doubled until the harvest.3) Large yield, 1.350, 1.350, 1700 g/plant for‘Kokei No. 14, ’‘kotobuki’and ‘Naruto-kintoki’respectively, indicated that the solution culture is suitable for various cultivers of sweet potatoes.
著者
佐藤 隆徳 矢澤 進 並木 隆和
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2-3, pp.25-31, 1984-09-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
31

発芽に変温を必要とするボリビア産トウガラシ‘No.3341’ (Capsicum chinense) の発芽特性について調査検討した.1.発芽温度を30℃とした場合, 播種7日後に15℃・24時間の変温処理を行うと, 非常に早く発芽し, 発芽率も高かった.2.発芽温度を30℃とした場合, 播種7日後に行った25℃・24時間の変温処理 (変温幅5℃) も, 発芽を促進した.3.発芽温度を30℃とした場合, 播種1日後に行った15℃・24時間の変温処理も, 発芽を促進した.4.30℃恒温で, 照明下では半数近くが発芽し, 光発芽性種子 (好光性種子) であることが認められた.5.暗黒下であっても, 変温処理を繰り返し行うと, 高い発芽率が得られた.6.GA3 (ジベレリン酸) 処理は, 最適濃度であれば, 照明の有無にかかわらず, 30℃恒温下で発芽を促進した.7.GA3の最適濃度からはずれた濃度の処理では, 発芽は光の影響を受けることが認められた.8.暗黒下でGA3処理した場合, 照明下での処理に比べ, 100および250ppmで著しく発芽が抑制された.
著者
石井 征亜 山崎 敬亮
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.207-213, 2002-06-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

Photon flux (PF) in the spectral regions of 300-400 nm (UV), 400-500 nm (B), 500-600 nm (G), 600-700 nm (R) and 700-800 nm (Fr) were observed almost daily with a spectroradiometer (LI-1800) at noon in from Jan. 2000 to Mar. 2001 at Gifu (lat. 35°25' N and long. 136°46' E) . The spectral ratio of B/photosynthetic photon flux (PPF) and R/PPF on clear days changed reversibly during the morning and in the evening; variability was less during the daytime. Whereas G/PPF was almost constant during the whole studies period irrespective of fine or cloudy weather. The B/PPF ratio increased rapidly from 24.6% on the winter solstice to 27.1% on the vernal equinox. After reaching a peak of 27.3% on the first day of autumn, it decreased gradually from the autumnal equinox to the winter solstice. The seasonal changes in R/PPF showed opposite tendencies for B/PPF. This cycle of spectral photon flux probably assists plants in making a distinction between spring and autumn season. We found that the PPF as well as UV, B, G, R and Fr values were nealy equal in vernal equinox and autumnal equinox. The R/PPF ratio for the fine days was high and B/PPF was low in comparison with the cloudy days.
著者
イスラム マハメッド シャヒドール 松井 年行 吉田 裕一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.245-251, 1994
被引用文献数
5

トマト (品種レディファースト) 果実の糖含量と酸性インベルターゼ活性に及ぼす炭酸ガス施用 (700~900ppmv) の影響について検討した.炭酸ガス施用を行った果実のブドウ糖と果糖は無施用区 (250~400ppmv) よりも有意に高かったが, ショ糖では有意差が認められなかった.酸性インベルターゼ活性は可溶性のものが細胞壁結合性のものよりも高かった.開花後50日からのインベルターゼ活性の増大は還元糖含量の増大傾向と一致した.さらに, 炭酸ガス施用を行った果実は対照区のものよりもインベルターゼ活性は高かった.炭酸ガス施用は光合成とインベルターゼ活性の増大を導き, 糖含量および果色を向上させるものと考えられた.
著者
イスラム マハメッド シャヒドール 松井 年行 吉田 裕一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.185-190, 1995

トマト (品種'レディファースト') 果実の糖含量とショ糖合成・ショ糖リン酸合成酵素活性に及ぼす炭酸ガス施用の影響について検討した.生育申に炭酸ガス施用を行った果実重量, 全糖, 還元糖は無施用区よりも有意に高かった.ショ糖合成酵素活性は開花後50日目まで施肥トマトで高く, その後急激に減少したが, 無施肥区では徐々に減少した.ショ糖合成酵素活性の減少はショ糖濃度の減少を伴った.処理間のショ糖濃度とショ糖合成酵素活性の間に有意差は認められなかった.ショ糖リン酸合成酵素活性は, 生育中比較的一定であった.
著者
長野 敏英 倉石 晉 仁藤 伸昌
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.11-19, 1980-03-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1

愛知県のサボテン栽培用温室で栽培中のサボテンの表面温度を測定したところ, ヒボタンニシキは57.3℃を示したが, これは高等植物で報告されている最高植物温度である.ヒボタンニシキは開花していたことから考えて, この温度下で生理活性を持っていたと考えられる.この温室内に生育していたすべてのサボテンは50℃以上であり, またテンオウマルは数回の日を変えた測定でも55℃以上を示した.このようなサボテンは夏期1日のうち2~3時間は50℃を, 10時間は40℃以上という長時間高温に保たれていた.キンシャチは表面から3mm以内に葉緑素を大量に含むが, 表面から5mmの深さの温度と表面温度は1日の測定で常に1℃以内の温度差に保たれていた.したがって, 赤外線放射温度計で測定された表面温度は光合成を行う部分の温度とほぼ等しいことがわかった.なおキンシャチの内部は1日数時間50℃け近くの温度を保っていた.
著者
岩根 正昭 藤原 弘
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.19-28, 1968-08-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
6

健康成熟のラット100匹, ウサギ15羽, モルモット16匹, ハムスター18匹については, +15Gzおよびtransverse15G (Gx) の負荷を10分間ほどこし, ハムスターには-10Gz10分間, イヌには+10Gz10分間, およびラット, ウサギ, モルモットにはそれぞれ-5Gz10分間負荷したときの心拍数変化を検討した.結果はつぎのとおりである.1) イヌに+10Gz10分間負荷した際の心拍数の変化: G増加にともない7G付近までは心拍数の増加傾向があるが, 以後10Gまでは減少を来たし, 10G滞留中は, さらに減少を来たし, 一過性の増加, その後減少が5分時までみられるが, 以後ゆるやかに減少, 徐脈となって死亡する.2) ラット生存群における+15Gzにおける心拍数変化: 生存群においては, Gの増加にともなって変化することなく, 心拍数は滞留負荷時にやや減少するが著しい徐脈とはならない.3) ラット♂死亡群における+15Gzにおける心拍数変化: Gの増加にともないゆるやかに心拍数は増加し, 滞留負荷開始後は, すみやかに徐脈となって死亡する.4) ハムスターに+15Gzを負荷した際の心拍数の変化: G増加にともない, わずかに心拍数の増加が続くが滞留負荷後は急速に減少を示す.8分時以後一時回復様: 相を示し, ある程度の増加を来たし死亡しない.5) モルモットに+15Gzを負荷した際の心拍数変化: G増加にともない多少心拍数の増加が見られるが15Gまでは元値と変わらず, 滞留負荷に至って著しく減少後, 死亡する.6) ウサギに+15Gzを負荷した際の心拍数変化: G増加にともない, 6G付近まで心拍数の増加を来たし, 以後ゆるやかに減少が続き, 滞留負荷中も漸次徐脈になり死亡する.7) ラット, ウサギ, モルモットに-5Gz, ハムスター, ラットに-10Gzを負荷した際の心拍数変化: -G負荷の場合はG増加にともなってはじめから心拍数の減少が著しく, 滞留負荷中一時動揺するが, 徐脈になって死亡する.8) ラット, ハムスター, モルモットおよびウサギにtransverse15G (Gx) を負荷t, た際の心拍数の変化: Gの増加にともない多少心拍数の増加が起こるが, 滞留負荷中はラット, ハムスターにおいて徐脈にはならない.モルモットの場合は滞留負荷中に急速の徐脈となって死亡する.ウサギの場合は滞留中に一時増加をともない, その後徐脈に移行する.
著者
古川 昭雄
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.77-85, 1975-06-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1 3

明・暗両条件下におけるポプラ葉のCO2交換速度に対する通気速度の効果を種々の光・温度・CO2条件下において調べた.純光合成速度に対する通気速度の効果は, 温度によってはほとんど影響されなかった.照射光強度が高い時は通気速度を高めると純光合成速度は著しく促進されたが, 光強度が低い時は通気速度の促進効果は低かった.明呼吸 (明条件下の呼吸) 速度は高い通気速度の時に高い呼吸速度を示したが, 暗呼吸速度はほとんど通気速度によって影響されなかった.明条件下においては光呼吸によって葉外に放出されたCO2が光合成の再固定作用のために再吸収されるが, 暗条件下においては光合成の再固定作用がない.すなわち, 通気速度を高めると再固定作用が阻害され, 見かけ上, 明呼吸速度が高められるからであろう.また, CO2補償点も通気速度によって影響されなかった.この原因は, CO2補償点下での光合成に対するCO2供給は細胞内で光呼吸によって放出されたCO2によっているためであろう.通気速度によって光合成速度が高められる一因は, 葉へのCO2供給を良好にするためと考えられる.CO2供給速度は, 今回の実験においては, CO2濃度と通気速度の1/3乗の積によって定められた.