著者
大西 成長 佳山 良正
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.103-109, 1980-12-31 (Released:2010-06-22)
参考文献数
22

閉鎖的環境であるハウス栽培では, 雨による溶脱が少なく, とくに過剰厩肥を投入する場合, 塩類の集積が作物の生育に大きな障害になる.本研究はこのような環境下におけるトマトの生産反応と土壌中の塩類の動向を追求してみた.ビニールハウスは71.5m2のもの2棟で, 各棟を2分して牛ふん厩肥50t/10a施用区と5t/10a施用区とした.各区の畝は, その底部にビニールシートを敷き, 溶脱水は200l容ポリタンクに導くようにした.50t区は化学肥料は施用しなかったが, 5t区は尿素: 50kg, 塩化カリ: 80kg, 熔リン: 80kg/10aを施用した.得られた結果は次のようである.1) 50t区と5t区のトマトの地下部を含む植物体重量と果実収量に大きな差はみられなかった.2) 50t区の土壌pHは第1作より第2作が終始高い値を示し, 定植後24週でも8.0を示し, 以後低下して7.0を保った.5t区の第2作目では定植後16週目で7.0に近い値を示したが, その後低下して5.0に近づいた.土壌のECは2作目で定植後3mmhoに達し, 以後低下, 16週後には2mmho以下になった.5t区は栽培期間を通じて0.5~1.0mmhoであった.3) 厩肥中の塩類の大部分は可溶性塩類であって, 生育初期では, 50t区の土壌中N-酢酸アンモニウム濾液のKが, 25me/100gも測られた.これは置換態Kと可溶性Kの合量である.この量は定植後16週目に10me, 32週後には7~5meと徐々に低下した.これは植物による吸収もあるが, 溶脱量も大きい.5t区は栽培期間を通じて, 5me以下であった.4) N-酢酸アンモニウム濾液中のCa量も異常に高かったが, これは置換態のCa+水溶性Caのほかに酢酸アンモニウムに溶ける土壌中のCaCO3などが原因であろう.5) 過剰厩肥の施用によって, 土壌中には塩類が多く集積するが, 有底ビニールハウスでは, トマトに障害がみられなかった.これは排水が良好なため, 溶脱が促進されたためと考えられる.
著者
吉田 重方 松本 博紀 トルン ブイチ 佳山 良正
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.358-361, 1985-10-30 (Released:2017-07-07)

非マメ科植物根における生物窒素固定能についての調査は主にC_4植物を多く含むイネ科植物を対象として行われており,数種のイネ科植物根やその根圏において半共生的な窒素固定(associative nitrogen fixation)が明らかに存在することが報告されている。さらに,イネ科植物のほかにもトクサ科のスギナやトクサおよびシソ科のStachys sylvaticaなどの根圏にも窒素固定能の存在が報告されている。それらはいずれも窒素固定能の間接的検出法であるアセチレン還元法によったものである。同手法は検出感度が高く,かつ低廉,迅速に窒素固定能を測定し得るために未知の窒素固定系を見い出そうとする場合には有力な手段となる。一方,草地における生物窒素固定の主体は言うまでもなく混生するマメ科牧草による共生窒素固定であるが,著者の1人は草地表面に被覆するランソウ(Nostoc sp.)によってもかなりの窒素固定が行われていることを前報で報告した。本報では,草地における上記以外の生物窒素固定系の存在を検索することを目的とし,各種草地雑草根のアセチレン還元能を調査した。
著者
大西 成長 佳山 良正
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.103-109, 1980

閉鎖的環境であるハウス栽培では, 雨による溶脱が少なく, とくに過剰厩肥を投入する場合, 塩類の集積が作物の生育に大きな障害になる.本研究はこのような環境下におけるトマトの生産反応と土壌中の塩類の動向を追求してみた.ビニールハウスは71.5m<SUP>2</SUP>のもの2棟で, 各棟を2分して牛ふん厩肥50t/10a施用区と5t/10a施用区とした.各区の畝は, その底部にビニールシートを敷き, 溶脱水は200l容ポリタンクに導くようにした.50t区は化学肥料は施用しなかったが, 5t区は尿素: 50kg, 塩化カリ: 80kg, 熔リン: 80kg/10aを施用した.得られた結果は次のようである.<BR>1) 50t区と5t区のトマトの地下部を含む植物体重量と果実収量に大きな差はみられなかった.<BR>2) 50t区の土壌pHは第1作より第2作が終始高い値を示し, 定植後24週でも8.0を示し, 以後低下して7.0を保った.5t区の第2作目では定植後16週目で7.0に近い値を示したが, その後低下して5.0に近づいた.土壌のECは2作目で定植後3mmhoに達し, 以後低下, 16週後には2mmho以下になった.5t区は栽培期間を通じて0.5~1.0mmhoであった.<BR>3) 厩肥中の塩類の大部分は可溶性塩類であって, 生育初期では, 50t区の土壌中N-酢酸アンモニウム濾液のKが, 25me/100gも測られた.これは置換態Kと可溶性Kの合量である.この量は定植後16週目に10me, 32週後には7~5meと徐々に低下した.これは植物による吸収もあるが, 溶脱量も大きい.5t区は栽培期間を通じて, 5me以下であった.<BR>4) N-酢酸アンモニウム濾液中のCa量も異常に高かったが, これは置換態のCa+水溶性Caのほかに酢酸アンモニウムに溶ける土壌中のCaCO<SUB>3</SUB>などが原因であろう.<BR>5) 過剰厩肥の施用によって, 土壌中には塩類が多く集積するが, 有底ビニールハウスでは, トマトに障害がみられなかった.これは排水が良好なため, 溶脱が促進されたためと考えられる.
著者
吉田 重方 松本 博紀 トルン ブイチ 佳山 良正
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.358-361, 1985-10-30
被引用文献数
1

非マメ科植物根における生物窒素固定能についての調査は主にC_4植物を多く含むイネ科植物を対象として行われており,数種のイネ科植物根やその根圏において半共生的な窒素固定(associative nitrogen fixation)が明らかに存在することが報告されている。さらに,イネ科植物のほかにもトクサ科のスギナやトクサおよびシソ科のStachys sylvaticaなどの根圏にも窒素固定能の存在が報告されている。それらはいずれも窒素固定能の間接的検出法であるアセチレン還元法によったものである。同手法は検出感度が高く,かつ低廉,迅速に窒素固定能を測定し得るために未知の窒素固定系を見い出そうとする場合には有力な手段となる。一方,草地における生物窒素固定の主体は言うまでもなく混生するマメ科牧草による共生窒素固定であるが,著者の1人は草地表面に被覆するランソウ(Nostoc sp.)によってもかなりの窒素固定が行われていることを前報で報告した。本報では,草地における上記以外の生物窒素固定系の存在を検索することを目的とし,各種草地雑草根のアセチレン還元能を調査した。
著者
大島 光昭 長友 武志 窪田 拓男 田野 仁 岡島 毅 佳山 良正
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.396-401, 1988-03-20
被引用文献数
2

1986年4月17日刈り取りの生育期のイタリアンライグラスから天日乾草およびサイレージを調製するとともに,これを破砕後,生重の50%を脱汁して得た搾汁粕(プレスケーキ)からも同様の方法で乾草およびサイレージを調製し,それらの栄養価をヤギによる4×4のラテン方格法で比較した。天候不順により,乾燥に5日を要した。サイレージ品質は,いずれも優れていた。プレスケーキの一般成分組成は原料草に比し粗繊維が多く,他の成分が少なかった。粗蛋白質,粗脂肪およびNFEの消化率は,サイレージよりも乾草で,また原料草よりもプレスケーキで低かった。そしてこれらの差が,乾物および有機物の消化率やTDNおよび可消化エネルギー含量に反映された。粗繊維の消化率は,飼料間に有意差が認められなかった。ヤギの窒素蓄積率は,原料草の乾草およびサイレージとプレスケーキサイレージの間に差がなく,プレスケーキ乾草のみが劣った。以上の結果は,プレスケーキを貯蔵する場合,悪条件下で天日乾燥すると著しい栄養価の低下を招くが,サイレージではその程度が低く,プレスケーキサイレージの消化性は原料草乾草と等しく,その窒素のヤギによる利用性は原料草乾草のみならず,消化率でやや優る原料草サイレージとも変わらぬことを示している。よって,プレスケーキと原料草の栄養価を比較する場合,貯蔵法をも考慮に入れる必要があろう。