著者
田島 悠史 大西 未希 小川 克彦
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.27-34, 2013

本研究は、情報コミュケーションに注目することで、小規模アートプロジェクトの持続要因を明らかにするものである。近年日本各地で急増している、地域活性化を目的とした小規模アートプロジェクトは、特殊な魅力を持つ一方で、持続性に問題がある。そこで、アートプロジェクトの関係者の役割と変遷に注目して、関係者間の情報コミュニケーションを分析し、その持続要因を探った。結果としてA期とB期のコミュニケーションにおいて「場所」「意識」「人」における有意差を見出すことができた。そこから「中心スタッフによるプロジェクトの共有」「関係者のゲートキーパー化」「周辺スタッフによるプロジェクトの様式化」という知見を見出した。これらの知見は、コミュニケーションが、一部の人間に占有されている状態から、関係者全体に共有される状態へと変化していることの現れであると考えられる。そこで本研究では「個別役割型から自発共有型へのコミュニケーション構造の変化がアートプロジェクトの持続性に関係している」と結論づけた。