著者
曵地 康史 木場 章範 大西 浩平
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

Ralstonia solanacearumは傷口等の根の開口部から宿主植物に侵入し、まず、細胞間隙にコロニー化する。コロニー化後、細胞間隙で著しい増殖を行う。細胞間隙での増殖の有無が、宿主植物に対する病原性の質的な決定因子であり、この増殖は、hrp遺伝子群にコードされるタイプIII分泌系から菌体外へ分泌するタイプIIIエフェクターを介した宿主植物との侵入直後の相互作用により決定されていた。細胞間隙での増殖が可能となったR.solanacearumは、タイプIIIエフェクターの働きにより宿主植物の遺伝子発現の変化を誘導し、病徴である青枯症状の誘導の有無を決定した。その後、R.solanacearumは、タイプIII分泌系を介して分泌する植物細胞壁分解酵素(CWDE)の働きにより、導管壁を分解し、その結果、導管へ侵入することが可能となった。R.solanacearumは、導管を通じて全身移行し、導管内に病原力因子である菌体外多糖類(EPS)を分泌し、導管閉塞をまねくことで植物の水分通道能を阻害した結果、感染植物は青枯症状を呈すると考えられた。hrp遺伝子群の発現制御タンパク質HrpBによって、CWDEであるPhcBの発現は部分的に正に制御されており、タイプII分泌系とタイプIII分泌系の分泌能は相互に制御しあうことが明らかとなった。さらに、hrp遺伝子群やPhcAなどの一部のCWDEの発現は、EPS合成の正の制御タンパク質であり、クオラムセンシングにより活性化されるPhcAによって、負に制御されていた。これらの結果から、R.solanacearumの病原性に関わる遺伝子は、宿主植物への侵入過程に応じて制御されており、R.solanacearumの増殖を介した一連の制御系に存在することが明らかとなった。