著者
林 一正 大谷 章栄
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.17-28, 1967-09-10 (Released:2018-01-31)
被引用文献数
1

セタシジミの消化管内容物を4月, 8月, 10月, 12月の4季節について検鏡して次の諸結果を得た。1. 消化管内容物は4, 8月の材料では消化管内1/3以上つまっていたが, 10月分には殆んど見られず12月分にはまた多量に入っていた。2. 乾燥重量%で消化管内容物の約37%が有機物であった。3. 面積比で消化管内容物の62∿70%が腐植物と泥土類, 2∿3%が淡水海綿の骨針, 残り29∿36%が動・植物であった。4. 消化管内容物より硅藻類23属89種39変種3品種;緑藻類6属12種1変種;鼓藻類1属4種1変種;藍藻類10属14種2変種;輪虫類・原生動物3種;その他に淡水海綿の骨針, 腐植質等を検出した。5. 検出されたものとしては特に, 硅藻類, 鼓藻類が夥しく, 硅藻類ではStephanodiscus carconensis及びその変種とMelosiraが大部分で, 8月砂・砂泥地の材料で上記属合して50%前後の他は平均80%以上を占めており, 鼓藻類ではStaurastrum dorsidentiferum var. ornatumが10月に各底質の材料で, 12月に砂・砂泥地のもので50∿60%を占めている。6. 冬季摂食量は他の季節に比べて最も多いが, 消化の程度は低い。7. 季節による消化管内容物の差はあまりない。