著者
大貝 健二 水野谷 武志 浅妻 裕
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.29-44, 2019-03-30 (Released:2020-03-30)
参考文献数
7

北海学園大学経済学部では,2017年度から学生フィールドワーク科目として,「地域インターンシップ」を導入している.この科目は,比較的長期にわたって地域に入り込み,地域で生活する人たちとのコミュニケーションを通じて,地域の課題や可能性を見つけ出し,課題解決に向けて実践することを目的としている.このような科目を導入するに至った経緯は,地域経済の疲弊や縮小に対して,大学として特に人材育成の観点から地域経済社会に貢献することを企図したことがある.また,本科目の特徴としては,外部コーディネーターにも関わってもらい,全体の利害調整や情報発信のほか,学生へのアドバイスも行ってもらっている.     2018年度で,パイロット期間を含め3年が経過するが,受入団体との信頼関係を築きながら,当事者が頭を悩ませつつ手探りで実施していることが実情である.しかし,3年間継続する中で,当初の「地域の人たちのお手伝い」から,学生提案型のプロジェクト(『天売島生活史』の作成,空店舗活用による交流空間の創出)へと,参加学生の交替を伴いながら,現地で取り組む内容を発展的に変化させてきている.そうした変化とともに,学生と地域の人たちとの関係や,地域の人たちの意識の面においても徐々に変化が見られ始めている.
著者
大貝 健二
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.309-323, 2012-12-30 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
1

経済のグローバル化や,少子高齢化の進行に伴い,国内地域経済の疲弊が進んでいる.そのなかで農商工連携,6次産業化など地域資源を活用した地域経済の活性化を目指す取り組みが展開されてきている.本稿で取り上げる北海道・十勝地域は,国内最大の小麦生産地であるが,その大部分は国内消費地へと移出されていることから,地域内で生産,加工,消費の連関は希薄であった.しかし,近年は,農業生産者,中小企業者などの地域の経済主体により,十勝で生産された小麦を地域内で加工し消費する,地域内経済循環を構築する取り組みが広まりつつある,同時に,十勝地域では,「農」や「食」をキーワードに,地域資源を活用した地域産業振興策が積極的に展開されている.そこで,本稿では,地域の経済主体による経済循環を構築する取り組みを明らかにするとともに,地方自治体による地域産業振興施策の展開にも注目している.