- 著者
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浅妻 裕
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.4, pp.289-309, 2004-12-30
川崎臨海部では, 1970年代後半以降, 国の産業分散政策や公害問題の激化等をきっかけとして事業所の移転が進んだうえ, 産業構造の転換が重なって, 鉄鋼業等の製造業が空洞化に長期的に直面し, 生き残りのための産業再編が進んでいる.本稿では素材型産業の産業再編やそれに伴う土地利用転換の現状を明らかにする.縮小再編傾向の強かった鉄鋼業は, 1990年代後半から, 大都市圏への隣接性を生かして, 廃棄物処理・リサイクルに関連した事業への積極的な取り組みを行っている.石油化学は, 従来から施設・設備の老朽化, 土地の狭隘生が強調されていたが, 石油化学業界の再編が, 汎用樹脂部門のみにとどまっていることなどが影響して, 土地遊休化を引き起こすような急激な再編はみられない.その一方で石油精製は, 1990年代後半からの激しい業界再編の影響で, 川崎臨海部でも事業所の集約化が進み, また遊休地も多く発生するなど, 再編が急速に進んでいる.また, これらの産業再編が進むことで, 土地利用転換が促され, 物流関連の事業所や都市的土地利用への転換が目立っている.川崎臨海部は, 長期的に公害被害に直面してきたが, これを歴史的チャンスととらえ, 環境負荷の削減を可能とする産業構造への転換や計画的な土地利用転換が求められている.