著者
大賀 佳子 千葉 敦子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
2020
被引用文献数
1

<p><b>目的:</b>ストレスの低減や職場の活性化に寄与する要因としてユーモアに注目が集まっているが,ユーモア表出の対象を同僚に限定し,ストレス反応や同僚からのサポートとの関連を検討した研究は少ない.本研究の目的は,看護職が同僚に対して表出するユーモアを調査し,心身のストレス反応及び同僚からのサポートとの関連を検討することである.<b>対象と方法:</b>東北地方A市の8つの病院で働く看護職765名を対象とし,自己記入式質問紙調査を実施した.心身のストレス反応と同僚からのサポートは職業性ストレス簡易調査票の結果を使用した.ユーモア表出は,ブラックジョークのような"攻撃的ユーモア表出",だじゃれや言葉遊びのような"遊戯的ユーモア表出",自虐ネタのような"自虐的ユーモア表出"の3つのタイプを測定する15項目のユーモア表出尺度(塚脇ら2009a)を使用した.ユーモア表出の傾向と心身のストレス反応及び同僚からのサポートとの関連をみるために統計解析を行った.<b>結果:</b>回答は672部(回収率87.8%)得られ,記入に不備のあったものを除いた623名(有効回答率81.4%)を解析対象とした.看護職が同僚に対して表出するユーモアは,自虐ネタのような自虐的ユーモア表出が最も多かった.各ユーモア表出に影響を与える属性要因を検討した結果,攻撃的ユーモアは性別,職位の有無,夜勤の有無,自虐的ユーモアは性別,職位の有無,遊戯的ユーモアでは性別,年齢階級に有意な関連が認められた.同僚からのサポートに影響する要因は,年齢階級,自虐的ユーモア表出,活気,イライラ,身体愁訴と有意な関連が見られた.<b>考察と結論:</b>看護職は同僚とのコミュニケーションに,自己や他者を支援する効果のある自虐的ユーモアを最も使用し,男性は女性よりもさまざまな種類のユーモアを活用していた.役職についている者は,軽い皮肉のような攻撃的ユーモアや自分の失敗を笑うような自虐的ユーモアをより使用する傾向が見られた.また,年齢を重ねることで,雰囲気を明るくするだじゃれのような遊戯的ユーモアの使用が増加する可能性が伺えた.自己の欠点や失敗をユーモアとして話したり生き生きと働くことは,同僚からのサポートを増加させる一方,イライラや心身の不調を抱えて働くことは,同僚からのサポートを減少させる可能性が示唆された.</p>