著者
大迫 弘江 高橋 超
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.44-57, 1994-07-20 (Released:2010-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
5 3

本研究は, 男女大学生を被験者として甘え表出に及ぼす性差と出生順位の影響を検討するとともに (研究I), 対人的葛藤事態における対人感情及び葛藤処理方略に及ぼす甘えの影響を検討すること (研究II) を主たる目的として行われたものである。甘え表出における性差の影響に関しては, 部分的ではあるものの, 男子よりも女子の方が強くなることが示された。出生順位に関しては, 長子と末子のみについて比較したが, 性差ほどには顕著な差異は認められなかったが, 兄弟姉妹に対する甘え表出においては, 長子よりも末子の方が強くなる傾向が示された。対人的葛藤事態における対人感情, 及び葛藤処理方略には, 甘え表出の強い者と低い者とでは顕著な差異のあることが明らかにされた。対人感情に関しては, 甘え表出の高い者の方がより強い不快感情を示していた。また, 葛藤処理方略に関しては, 他譲志向, 自譲志向, 方向探索, 状況離脱志向の全ての方略において, 甘え表出の強 い者の方が用いやすいことが明らかにされた。これらの結果を, 土居 (1971) の提唱した甘え理論の枠組みで考察し, また, 甘え測定にかかわる問題点などを指摘した。