著者
梅原 次男 熊本 悦明 丸田 浩 大野 一典
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.635-644, 1985-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

1968年4月から1984年3月までの16年間に当科で手術療法を行った尿道下裂症例61例, 及び male hermaphrodism 28例の計89例につきレ線学的に後部尿道の形態を中心に比較し, 両疾患の境界点を検討した. 検討内容は, 両疾患における vaginal rest の合併頻度 vaginal rest の大きさ及びその後部尿道への開口部の位置である. 又, 併せて先天奇形やIVPの異常頻度も検討した. 結果は, 以下の如くであった.(1) Vaginal rest の合併頻度は glandular 25%, penile 29%, penoscrotal 43%, scrotal 71%, perineal 100%で尿道下裂と male hermaphrodism 全体では, 84%であり下裂の程度が高度になるにつれ, 合併頻度も高い傾向にあった.(2) 停留睾丸の合併は, 尿道下裂41%, male hermaphrodism で85.7%であった.(3) IVPの異常は, 尿道下裂21.4%, male hermaphrodism で21.4%であった.(4) Vainal restの大きさを後部尿道の長さに対する相対比で比較してみると, 尿道下裂では, 後部尿道に対して2/3以下であるのに対して, male hermaphrodism では2/3以上であった.(5) Vaginal rest の後部尿道への開口部の位置を検討してみると, 尿道下裂では, 正常の vermontanum に開口していたのに対して, male hermaphrodim では, 外括約筋へ近づいて開口している結果であった.以上の結果より, 尿道下裂を male hermaphrodism と臨床上, 区別するとすれば, vaginal rest の大きさが後部尿道の長さに対して2/3以下であり, vaginal rest が正常の vermontanum に開口することが, 一応の鑑別点になると考えられる.
著者
大野 一典 熊本 悦明 毛利 和富 青木 正治 豊島 真 杉山 善朗
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.1486-1492, 1985-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
8

機能的 (心因性) インポテンスにおいて, そのパーソナリティーを十分に把握することが本症の診断治療に役立つものと考え, 投影法による心理検査を行った. この場合対照として正常人のみならず, 性染色体異常症である Klinefelter 症候群, 低 androgen 状態である類臣官症についても同様の検討を加えた.機能的インポテンス患者では, 男性としての性的役割, 性的同一視が Klinefelter 症候群, 類宦官症に比較して確立している傾向にあるにもかかわらず aggressiveness が乏しく, 内向的で感情の抑制が強いと言う結果であった. このことから, 機能的インポテンスの治療を行う場合心理学的アプローチにより, aggressiveness 低下という点を改善する必要があると思われた.