著者
大野 源広 田崎 和江
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.298-309, 2000-09-25 (Released:2017-07-14)
被引用文献数
2

高温環境である平湯温泉,おばこ原の湯には3種のバイオマット(白色,茶色,緑色)が存在する.これらのバイオマットは水温,pH,Eh,DO,光および温泉水の流れの変化に伴い,上流部から下流部に向かって色調が白色→茶色→緑色へと変化する.白色バイオマットは主として大鎌型細菌から構成され,硫黄を濃集するのに対し,茶色バイオマットは多量の桿菌および少量の糸状菌で構成され,水酸化鉄を濃集する.また,緑色バイオマットは糸状菌から構成され,カルシウムを濃集し,方解石を形成する.すなわち,バイオマットの色は生息する微生物種と形成された生体鉱物を反映している.その中でも高温環境下に存在する大鎌型細菌は夾膜の表面に雁行状に硫黄の結晶を成長させる特徴がある.