著者
天池 孝子 光本 孝次
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.565-589, 1970-11-25

鶉の免疫遺伝学的研究として,免疫操作の確立と,同種免疫抗体の産生および再生,そして,その性質を明らかにし,遺伝的分析も試みた。1.鶉の血球抗原に対し良質の自然抗体を得ることは困難で,抗体は存在しないか,存在しても,その力価は非常に低いと観察された。2.抗鶉家兎血清を使用して,おおまかに鶉個体を識別することも可能である。3.同種免疫抗体では,抗原量を生理食塩水2%で0.5ccを4〜5回,つづいて5%,0.5〜0.7ccを3〜5回,3日隔で直接静脈内に免疫操作で,力価約64倍の抗血清を得た。4.同種免疫抗体のホールプラスチック板の凝集精度は試験管法のそれに比して,はるかに低いと観察された。5.鶉同種免疫血清は,Coombsテストや酵素処理法で,一価抗体の産生が観察されなかった。6.同種免疫血清の吸着操作には,最適抗原量は5〜10%の範囲,吸着時間は90〜120分で行なわれた。7.AT1血清に対する雛鶉の抗原性は1週齢で発現すると推察される。8.二つの遺伝子座位の存在が推定され,それぞれは複雑な抗原因子を支配していると推察され,.複対立遺伝子の存在が考えられる。9.現在までにAT1,AT2,AT3,AT4,AT5,AT6,AT7,AT8,AT9血清が作出され,AT3血清はAT8血清において完全に再生され,他も同様に,ほぼ再生されうる。