著者
天野 郡壽 金 恵子 天田 英彦 REINARUTH Carlos Maria
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1、フィリピンのPBA、韓国のKBLはプロ組織である。しかしながら、いずれの国のクラブもその経営形態は、クラブの運営経費をオーナー会社に頼る、いわば「企業サポートクラブ」であるといえる。2、PBAチームのオーナー会社は、バスケットボールを企業の宣伝の手段と認識しており、クラブ維持経費を企業の総宣伝経費との比較でとらえ、バスケットボールは国民に対して会社の健康なイメージを与える格安で絶好の宣伝手段であるとしている。3、KBLはオーナー会社の宣伝と社員の帰属意識向上のためという2つの目的を立てている。4、日本のバスケットボール選手は、社員選手、嘱託社員選手、プロ契約選手の3種類にわけられる。社員選手はスポーツ中心の生活であるが、その給与体系や福利厚生は社員のそれが適応される。嘱託杜員にも福利厚生や住居費などが社員に準じて与えられる。選手は怪我や引退のリスク回避を、チームを保有する企業の「スポーツ活動の支援は企業の社会的責任である」また「社内のクラブ活動は厚生事業の一環であり、プロ選手の保有はその基本理念になじまない」という基本姿勢が、日本独特の「企業選手」を作り上げている。5、選手の給与は、JBLは400万から1,500万円、KBLは3,600万ウオンから20,000万ウオン、PBAは300,000ペソから2,000,000ペソで(韓国、フィリピンはサラリーキャップ制度導入)、またいずれの国も遠征手当て、試合手当て、勝利手当てなどを支給している。それらを合計すると、日本の社員選手においても他の同年齢の社員よりは高い報酬を得ているといえる。6、報酬は高いものの、ほとんどの選手が選手を辞めた後の生活設計に悩みを持っている。7、いずれの国も、外国人選手の試合参加は2名以内という制限を設けている。さらにPBAとKBLは外国人選手に対して身長に制限を設けている。そのうえKBLでは、各試合の第2クオーターを外国人の参加1名と制限し、自国選手に参加の機会を増やしている。8、バスケットボール部を持つことにより企業にとって経済的効果については、先に述べたようにその経営基盤がかなり異なるために、3国間の比較はできなかったが、少なくとも韓国、フィリピンでは企業クラブは大いなる宣伝効果が期待できると考えている。