著者
天谷 まり子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.310-318, 2015 (Released:2016-02-24)
参考文献数
17

目 的 糖尿病をもつ女性の妊娠から出産にいたるまでの過程における体験を見出すこと。対象と方法 研究参加者は糖尿病を基礎疾患にもち,妊娠し生児の出産を体験した女性。研究デザインは質的記述的研究とし,データ収集は半構成的面接,分析方法はグラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析手法を用いた。分析レベルはアクシャルコーディング段階までとし,現象の抽出と現象ごとのカテゴリー関連図による,ストーリーラインの生成を行った。結 果 研究参加者は8名であり,初産婦・経産婦,経膣分娩・帝王切開術,1型糖尿病・2型糖尿病と背景はさまざまであった。8名分のデータからカテゴリー関連図をもとにパラダイムを統合させた。結果,糖尿病をもつ女性の妊娠から出産にいたるまでの体験として,【自らの意思により妊娠を選択する】,【試行錯誤の中で主体的に血糖コントロールに挑む】,【妊娠による食事の変化と格闘する】,【おなかの中の子どもをあるがままに受け入れる】という,4つの現象が見出された。また,各々の現象のプロセスとしてのストーリーが導かれた。結 論 糖尿病をもつ女性の妊娠から出産にいたるまでの体験は,自らの意思で妊娠を選択することによる血糖コントロールへの意識の高まり,迷いながらも妊娠中の血糖コントロールにおいて自分に合った方法を主体的に見つけようとする挑戦,妊娠によって迫られる食事の見直しや調整という格闘,おなかの中の子どもを奇形や疾患の有無に関わらず自分の人生の中に受け入れるというものであった。それは,独力で妊娠と糖尿病の適応調整を行うことであり,そこに葛藤や苦痛が伴う体験であった。そのため,助産師においては,糖尿病をもつ女性の主体性を尊重し,そばに寄り添いながら身体的にも心理的,社会的にも支えていくことにより,妊娠や出産にまつわる体験をwell-beingに導くことが望まれる。