著者
天貝 静 江守 陽子 村井 文江 小泉 仁子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.387-395, 2014-07

本研究は社会経済的地位と,妊娠週数33〜37週にある女性の抑うつあるいは人生満足度との関連について明らかにすることを目的とした。地域の中核病院である一施設において, 225名の妊婦に対し,抑うつと人生満足度に関する自記式質問票を配布した。また,産褥2〜4日に,妊娠期の調査に回答した女性のうちの192名に面接を行い,社会経済的地位について調査した。最終分析数は153件であった。その結果,研究対象者の年齢は20歳代が多く,学歴は夫婦とも高くなく,拡大家族が多かった。これらは調査施設周辺の地域の特徴を反映したものと思われる。さらに,女性を人生満足度得点と社会経済的地位で比較を行ったところ,人生満足度得点はパートナーの学歴と関連があった。妊娠中の抑うつ感情では,抑うつ傾向のある女性は抑うつ傾向のない女性より経済的困難感を自覚し,パートナーの学歴と年収が低かった。一方,女性が経済的困難感を自覚するとき,妊娠中に抑うつである確率は4.611倍(p=0.015, [1.341, 15.850]),パートナーの雇用形態が正規雇用のときは,抑うつである確立は0.099倍(p=0.001, [0.016, 0.631])となることが示された。よって,医療者が周産期にある女性の社会経済的地位と健康との関係に注目する意義は大きいと考える。