著者
江守 陽子 前原 澄子 工藤 美子 森 恵美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

母子相互作用において、近年もっとも注目されているのは母子の行動心理学的な作用であろう。見つめあい、タッチング、抱いて揺するなどは効率よく子供の注意を喚起する効果が認められている。こういった相互作用によって母と子がしっかりと結ばれ、また、それによって子供の成長が促進されるのであれば、看護者はできるだけ長く、かつ有効にその機会を持つような援助を考えるべきであろう。本研究では母親が子どもを抱いてあやすという行動に着目し、それが児にどのような影響を及ぼすのかを観察した。その結果は以下の5点に要約できた。1.抱くという刺激は児を泣きやます効果が認められる。2.たて抱きは、刺激直後の児の覚醒状態を急激に下げ、その後、穏やかに下降させる。すなわち、児を泣きやますには即効性があり、敏活な状態にする効果が認められる。3.横抱きは、刺激直後の児の覚醒状態は穏やかに下降し、その後(40〜80秒後)、さらに下降する。4.抱き上げずに布団を掛けるだけでは児の覚醒レベルの変化は認められなかった。5.啼泣の中止や敏活性を高める目的では運動感覚に対する刺激が有効である。
著者
天貝 静 江守 陽子 村井 文江 小泉 仁子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.387-395, 2014-07

本研究は社会経済的地位と,妊娠週数33〜37週にある女性の抑うつあるいは人生満足度との関連について明らかにすることを目的とした。地域の中核病院である一施設において, 225名の妊婦に対し,抑うつと人生満足度に関する自記式質問票を配布した。また,産褥2〜4日に,妊娠期の調査に回答した女性のうちの192名に面接を行い,社会経済的地位について調査した。最終分析数は153件であった。その結果,研究対象者の年齢は20歳代が多く,学歴は夫婦とも高くなく,拡大家族が多かった。これらは調査施設周辺の地域の特徴を反映したものと思われる。さらに,女性を人生満足度得点と社会経済的地位で比較を行ったところ,人生満足度得点はパートナーの学歴と関連があった。妊娠中の抑うつ感情では,抑うつ傾向のある女性は抑うつ傾向のない女性より経済的困難感を自覚し,パートナーの学歴と年収が低かった。一方,女性が経済的困難感を自覚するとき,妊娠中に抑うつである確率は4.611倍(p=0.015, [1.341, 15.850]),パートナーの雇用形態が正規雇用のときは,抑うつである確立は0.099倍(p=0.001, [0.016, 0.631])となることが示された。よって,医療者が周産期にある女性の社会経済的地位と健康との関係に注目する意義は大きいと考える。
著者
吉成 舞 江守 陽子 川口 孝泰
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20181130044, (Released:2019-04-12)
参考文献数
20

本研究の目的は,性周期における嗅覚感受性の変化およびにおいに対する嗜好の変化を明らかにすることであった。研究対象は,嗅覚機能が正常で,性周期の安定した20歳代の成熟期女性36名とした。方法は,嗅覚測定用基準臭であるT&Tオルファクトメーターを用い,成熟女性の黄体期と卵胞期の2時期で嗅覚検査を実施した。また,においの種類に対する嗜好性についても調査した。その結果,イソ吉草酸(C5H10O2)において,卵胞期よりも黄体期で検知閾値が有意に低く(p< .05),嗅覚感受性が高いことが示唆された。イソ吉草酸は腐敗臭や,ひとの体臭に近いにおいとされるものである。また,黄体期では基準臭A(C8H10O)のにおいを好むものは,Aのにおいが嫌いであるものに比べ,認知閾値が有意に高く(p< .05),嗅覚感受性が低いといえた。その他のにおいでは性周期による嗅覚感受性の変化は認められなかった。
著者
江守 陽子 青木 和夫 吉田 義之
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.369-377, 1995-12-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
28
被引用文献数
3 2

揺りかごによる振動刺激が新生児にどのような影響を与えるかを, 新生児の啼泣と生理学的指標に着目して検討した. 健康新生児54名を対象に, 振動周波数1Hz, 振幅55mm, 加速度1m/s2, Z軸方向, 正弦波振動を5分間負荷した. その結果を要約すると次のとおりである.(1) 揺りかごの振動刺激は新生児の啼泣を速やかに停止させる効果が認められた. (2) 揺りかごの振動刺激は啼泣中の新生児の心拍数, 末梢体表面温度, CVR-Rを減少させ, 呼吸数を増加させた. (3) 揺りかごの振動刺激は睡眠中の新生児の末梢体表面温度, CVR-Rを減少させ, 呼吸数を増加させた. (4) 今回使用した振動刺激は, 啼泣している児については鎮静化する効果が認められた. しかし, 睡眠中の児には覚醒へと導く強い刺激となった. 今回の実験で用いた加速度は, 新生児の啼泣を停止させるためには十分な加速度であると考えられたが, 睡眠中の児に対しては覚醒を引き起こすため, もっと弱い加速度の振動が望ましいと考えられた.
著者
楠見 由里子 江守 陽子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.40-47, 2013 (Released:2013-09-18)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

目 的 冷え症における主観的指標として冷え症評価尺F度を,客観的指標としてレーザー組織血流計を用いて測定し,冷え症と周産期アウトカムとの関連について検討した。対象と方法 妊娠末期の妊婦125名(初産婦名76,経産婦49名)を対象に,両手第2指の指尖部における末梢血流量の測定と,4因子8項目からなる冷え症尺度による非妊時の冷え症の自己評価に関するアンケート調査を実施した。さらに,分娩終了後には妊娠分娩経過を診療録より転記した。結 果 妊娠末期の妊婦においては,冷え症評価尺度と末梢血流量の間には関連がなかった(r=-0.036, p=0.687)。冷え症評価尺度の高得点群の初産婦においては,分娩の際の入院時点の子宮口が3cm未満の開大であったものが多かった(p=0.014)。 一方,指先の末梢血流量が少ない群と多い群で分けると,低血流量群では妊娠中の血圧が低く(p=0.047),かつ脈拍数が少なかった(p=0.024)。さらに,低血流量群の初産婦では,分娩第 II 期遷延が多く(p=0.016),ロジスティック回帰分析により交絡因子の影響を排除しても,低血流量と高年齢が分娩第 II 期遷延の要因として示された。結 論 妊娠末期における血行不良は,初産婦における分娩第 II 期遷延の要因となる可能性がある。また,妊娠末期の血流量と非妊時の冷え症の自覚は関連しない。
著者
江守 陽子 村井 文江 斉藤 早香枝 野々山 未希子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

出産後の母親の育児不安軽減を目的に、出産後~12週の間の母親の育児不安や心配の時系列的変化、母親のニーズに合致した訪問時期および家庭訪問のアウトカムを検討した。結果1.家庭訪問は母親の不安を軽減した。結果2.家庭訪問の適切な実施時期として、初産の母親は新生児早期と乳児期早期、経産の母親は新生児期後半~乳児早期と考えられた。また、母乳や乳房のトラブルに関しての心配や不安の軽減には、生後2~3週の新生児期早期が適切である。