- 著者
-
天野 殖
笹原 正清
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1998
遺伝性てんかんミュタントラット(IGRER)の海馬体には神経細胞の微少形成異常が認められる。この神経細胞の微少形成異常の発現機序を解明することはこの遺伝性てんかんラットにおけるてんかん発作の原因に直接的に迫るものである。本研究はIGER海馬に見られる微少神経形成異常の病理形態学的異常の詳細を明らかにし(実験1)、次いでBrdUを神経細胞の分裂・移動のトレーサーとして用い以下の事を明らかにしようとするものである。(1)海馬錐体細胞が胎生期においていつ分裂し、どのようなルートをたどり目的部位へ移動するか(実験2)。分裂、移動の障害があるかどうか、またあるとすればそれはどのようなものであるか(実験3)。結果並びに考察:第1の実験によりIGER海馬体には錐体細胞の配列の乱れ、層構造の途絶並びにSt.rad領域の異常神経細胞集簇よりなる微少神経形成異常が認められた。形成異常は2ヶ月齢の動物に雌雄の差無く常に認められ、常染色体遺伝形式を示すことが明らかとなった。遺伝的に決定された形成異常であり、胎生期に発現する遺伝子異常があると考えられるた。第2の実験によりてんかんラットの微小形成異常を構成している神経細胞の主体は胎齢16,17日に分裂するものであった。移動のルートには特に異常を認めなかった。第3の実験によりIGERでは海馬原基で分裂した細胞は中間帯に移動した後,長く同部に止まることが明らかとなり、この中間帯での停滞による移動遅延が結果的には移動の障害を招き微小形成異常の病理発生に関与していることが類推された。