- 著者
-
太田 亘
- 出版者
- 日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
- 雑誌
- 現代ファイナンス (ISSN:24334464)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, pp.1-35, 2020-07-15 (Released:2020-07-15)
- 参考文献数
- 45
証券市場において大口投資家は,流動性および価格発見に影響を与える.大口投資家が発注するとき,他の投資家および私的情報を保有する情報投資家も同じタイミングで発注することで,売買が活発になり,価格発見が行われてボラティリティが高くなる,という集中仮説,および大口投資家がしばらく発注しないと予想されるとき,情報投資家が発注することで価格発見が行われてボラティリティが高くなる,という締切仮説が考えられる.本稿では,日本銀行を大口投資家として,REIT購入前後の取引について,公表情報を用い,2つの仮説を検証した.分析結果は2つの仮説と整合的であるとともに,大口投資家が発注するとき流動性が向上し,しばらく発注しないと予想されるとき流動性が低下することがわかった.大口投資家の発注は,他の投資家の戦略的行動を通じて,発注時のみならず非発注時にも流動性および価格発見に影響を与えている.