著者
太田 茜
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.237-244, 2008 (Released:2010-07-29)

雑誌は当時の生活を知る手がかりになるものであり、婦人雑誌に掲載されている多くの衣服についての記事や広告から当時の衣生活を考えることができる。雑誌には想定された読者層が存在しており、同じ国の同じ時代に発行された雑誌であっても読者層が違えば誌面にみられる衣服が異なることが考えられる。そこでアメリカで19世紀末に発行されていた婦人雑誌2誌を比較し、服の種類や入手方法、価格などに違いがないかを検討した。資料は現在もアメリカで発行されているファッション誌『ヴォーグ』と『ハーパース・バザー』を使用した。結果として『ヴォーグ』と『ハーパース・バザー』には共通点がいくつかあるものの、それぞれの雑誌の特徴がみられた。『ヴォーグ』の方がより上流階級の人々を読者として想定した社交界に関する記事やファッションが多くとりあげられており、『ハーパース・バザー』の方が実用的な記事が多くみられた。同じような階級の女性の中にも細かい違いがあり、それにもとづいたアメリカの女性の生活レベルが雑誌の誌面にも反映されていたといえる。