著者
太田 裕道
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本公募研究の目的は、(1)誘電体人工超格子やヘテロ酸化物界面近傍に誘起される二次元電子ガスの電子状態と量子サイズ効果の相関を明らかにすること、(2)誘電体中の二次元電子ガスを積極的に活用した機能材料設計指針を提案することである。二次元電子ガス近傍の原子・電子状態を高いエネルギー分解能で捉えることにより、巨大Seebeck係数のオリジンを解き明かし、誘電体中の二次元電子ガスを積極的に活用した材料設計指針を提案することが可能と考えている。SrTiO_3/SrTi_<0.8>Nb_<0.2>O_3人工超格子やTiO_2/SrTiO_3などの誘電体ヘテロ界面のSrTiO_31単位格子層(0.3905nm)に局在化した高濃度の電子ガスは、バルクの5倍に相当する巨大熱起電力(Seebeck係数)を示すことから、未だ実現していない酸化物熱電変換材料のひとつの開発指針として注目されている。Seebeck係数の大きさは、フェルミエネルギーにおける伝導帯状態密度(DOS(E))のエネルギー微分(∂DOS(E)/∂E)に依存するため、量子サイズ効果によるDOS(E)の増大が巨大熱起電力の起源と考えられている。また、Seebeck係数は伝導電子濃度の関数であるため、伝導電子濃度を連続的に変化させながらSeebeck係数を計測することでDOS(E)の情報を得ることができる。平成21年度は、誘電体ヘテロ界面の電子濃度を連続的に変化させるため誘電体をチャネルとした電界効果トランジスタを作製し、絶縁体/SrTiO_3および絶縁体/KTaO_3ヘテロ界面のSeebeck係数の電界変調に成功した。