著者
田中 龍彦 林 裕也 小宮 佳和 奈部川 英則 林 英男
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.327-332, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
13
被引用文献数
5 8

酸性溶液中,ヨウ素酸カリウムとヨウ化カリウムとの反応で生成したヨウ素に一定過剰量のチオ硫酸ナトリウムを加え,未反応のチオ硫酸イオンを電量ヨウ素滴定する方法により,ヨウ素酸カリウムの絶対純度を測定した.本研究では逆滴定の手法を採用しているので,濃度が精確に分かったチオ硫酸ナトリウム溶液を必要とすることから,まずチオ硫酸ナトリウム溶液の調製方法と安定性について検討した.使用直前に煮沸して冷却した高純度水に市販特級のチオ硫酸ナトリウム5水和物を溶解することにより,酸素,二酸化炭素及び硫黄バクテリアに起因するチオ硫酸イオンの分解は起こらなかった.また,テフロン細口試薬瓶に保存した約0.5 mol kg−1チオ硫酸ナトリウム溶液は調製直後でも非常に安定であり,安定剤の添加なしに約1か月間濃度変化はほとんど認められなかった.保存容器の材質としてはプラスチックが適していた.この溶液をヨウ素酸カリウム標準物質純度の電量測定に使用した結果,満足できる精確さが得られた.