著者
奥佐 千恵 平 昇市 笠原 知子 川口 久美子
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.24, pp.O023, 2008

【はじめに】我々は平成18年19年に女子ウエイトリフティング競技ナショナルチームの強化合宿中の選手に関わる機会を得た.その後,平成19年9月にタイ国で開催された第19回女子ウエイトリフティング世界選手権大会に出場する日本代表選手団に帯同し,大会中の選手に携わる機会を得たので,それらの活動内容に若干の知見を加えて報告する.<BR>【選手・スタッフ構成】合宿には13~15名,国際大会には9名の選手がいた.そこに監督とコーチからなるテクニカルスタッフが2~4名,日本オリンピック委員会強化スタッフのチームトレーナー1名が加わる.<BR>【活動内容】ナショナルチームとして招集された選手達のコンディションは様々である.そのため,合宿中には各選手のコンディションや置かれている立場・状況に応じて,病院内あるいは練習場で治療・ケア・応急処置・指導などを行った.国際大会には,事前合宿が行われていた国立スポーツ科学センターを訪問し各選手のケア及びスタッフとの事前打ち合わせを行った上で,チームに帯同した.現地入りしてからは,練習前後に宿舎で,そして試合当日には競技直前と競技中においてはアップルームでコンディショニング・ケアなどに携わった.<BR>【現場からの要望】合宿中において,監督からは方向性の統一化の元,選手の体をよくすることを第一の目的としたリハビリ以外に,「選手と指導者側とのズレを埋める」「メンタル面のフォロー」などが求められた.国際大会においては,特に「選手がその場で変わる調整」が求められた.選手からは痛みの軽減や身体機能の回復などが求められる一方で,合宿中の記録会や大会では「痛みが出現しようが体が壊れようが記録を出したい」という要望が少なくなかった.また「指導者側が求める事が実際に再現できない」「自分のイメージ通りに体が動かない」などといった意見も多く,選手・指導者側が求める最高のパフォーマンスの獲得あるいは再現を叶えるための関わりが求められていると感じた.しかし,現場での監督・選手からの要望は必ずしも一致するわけではなく,また現場では,理学療法に関する知識や技術以外のものも多く要求された.<BR>【おわりに】スポーツ現場では,医師以外の何らかの有資格者はトレーナーとして一括されることが往々にしてある.そこでは必ずしも理学療法士という「資格」ではなく,選手の競技力を向上させ,試合で最高のパフォーマンスを発揮できるための手伝いができる「人」が求められる.関わる以上,そこにかかる労力とコストは惜しめない.今回の経験より,我々理学療法士はスポーツ医療に関わる多くの職種の共通部分と専門性をより明らかにし尊重し合い,他職種との連携や役割分担を図り,選手・チームに関わっていかなければならないと強く感じた.