- 著者
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奥倉辰行 編
- 出版者
- 水生堂
- 巻号頁・発行日
- vol.巻之1上,巻之1下,説, 1855
本書は奥倉辰行(『異魚図纂・勢海百鱗』解題参照)が刊行した「鯛」類の図説だが、「鯛」といっても、かんざしだひ(現イトヒキアジ)など、タイと縁遠い種類が多い。本書は図部(『水族写真 鯛部』、図が主体)と説部 (『水族写真説』、解説が主体で、図は無い)に分かれるが、注意すべきなのは、両部とも内容の異なる3種類ずつが存在することである。すなわち、図部には(A)安政2年刊、序は森立之、跋は無し/(B)安政3年刊、序は曲直瀬正貞、跋は多紀元堅/(C)安政4年刊、序は森・曲直瀬ともにあり、跋は無し、の3種類がある。一方、説部はすべて安政4年刊だが、(a)曲直瀬序と多紀跋あり/ (b)森序あり、跋無し/(c)序なし、多紀跋あり、の3種類がある。したがって、A+a、B+b,C+cと組合わせて配布・発売すれば、森序・曲直瀬序・多紀跋が揃う。特7-151本(本資料)はA+a型であり、特7-152本と午-53本はC+c型、特1-912本はC+bの寄せ集め本で、跋文を欠く。特7-150本はBのみで、当館にはB+b型は無い。このように複雑な出版をした理由はわからないが、Cの色彩がA・Bより劣ることと併せて、十分な注意を要する。:『稀本あれこれ』参照(磯野直秀)