著者
安達 真梨子 近藤 弘晃 藤田 那恵 日向 俊輔 奥富 俊之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.437-442, 2021-09-15 (Released:2021-11-05)
参考文献数
10

われわれの施設では帝王切開術における脊髄くも膜下麻酔後低血圧を予防する目的でフェニレフリン持続投与を行っている.今回,持続投与を行っていなかった期間と比較して,その影響を後方視的に検討した.フェニレフリンの持続投与は麻酔施行直後より1mg/hで開始し,必要時に昇圧薬のボーラス投与を行った.フェニレフリン1mg/hの予防的持続投与は,麻酔後低血圧の発生率や追加治療介入の必要性を有意に減少させた.また,持続投与を行わなかった場合と比較して反応性の高血圧や徐脈などの発生頻度を増加させることなく使用できた.
著者
奥富 俊之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.159-164, 2008 (Released:2008-02-16)
参考文献数
3

麻酔科医からすれば, 無痛分娩は麻酔行為であるから, その担当者は当然麻酔科医と思うかもしれない. しかし実際に産科麻酔を実践するには, 麻酔科学の基礎知識や麻酔技術はいうまでもなく, 麻酔が母親の出産体験や, その後の家族の育児にどのようにかかわるのか, 自然の分娩経過にどのような影響を及ぼすのか, あるいは担当産科医の分娩管理にどのように影響を及ぼすのかを考慮し, 家族, 産科医, 新生児科医, 助産師など妊婦を取り巻く人々と良好なコミュニケーションをとりながら, 妊婦にいかに安全で快適な環境を提供できるかを考えていく必要がある. そのためには産科麻酔科医というサブスペシャルティーの確立が望まれる.
著者
奥富 俊之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.678-684, 2008-06-15 (Released:2008-08-13)
参考文献数
19

一般的には用量を適切に選択すればロクロニウムはスキサメトニウム同様作用発現が速く, 蓄積性が少ないが, 帝王切開術の際に用いるためには, 妊娠という生理的変化, 子宮胎盤血流を介しての胎児の存在, 短時間手術, 全身麻酔が適応となった病態をふまえて使用する必要がある. それらの特殊性ゆえ現段階で, 両筋弛緩薬の優劣はつけ難い. すなわちロクロニウムはスキサメトニウムにみられる副作用の軽減には有用だが, 帝王切開においては作用発現時間, 持続時間の面で完全ではない. したがって帝王切開術に対する全身麻酔の適応と筋弛緩薬の選択には慎重な考慮が必要であり, 一般手術より帝王切開術で遭遇頻度の高い挿管困難に対する対策を万全に整えておくべきである.